朝ドラ「おむすび」で"ギャル文化"がスベッたワケ 「平成」リバイバルブームが起きているのになぜ?
東洋経済オンライン / 2024年10月28日 9時30分
近しい人にヒアリングしても、番組に関するSNSの投稿を見ていても、平成ギャルの世界には馴染みがなく、違和感を抱いている声が目立っていた。
筆者より下のギャル世代に聞いてみても、「自分はギャルじゃなかったからわからない」という回答ばかりだった。
2000年代、筆者はダンススクール(ただし、パラパラではない)に通っていたのだが、ギャルファッションの10代の女性の生徒もいた。話してみると普通の女子で、テレビで放映されているようなギャル用語を使ったりはしていなかった。
実際、「ギャルっぽいファッションはしていたが、ギャルではなかった」という人はほかにもいるのだが、「ギャルだった」という知り合いは筆者にはいない。
筆者とは住む世界が違うのだろうが、そもそも、当時「ギャル」と呼ばれていた人たちの数は、そんなに多かったのだろうか?
メディアで騒がれているような典型的なギャルは少数派で、テレビや雑誌に影響されてギャルを真似ている子が都心近郊や地方に点在している――といった話は、当時からよく聞いていた。
『おむすび』で描かれているのも、そういう人たちだと言えるだろう。といっても、「そういう人たち」も、やはり少数派だったのではないだろうか? 逆に、描かれている世界自体に違和感を示す声は意外に少ない。不評なのは、世界観の問題ではないようだ。
要するに、ギャルだけでなく、ギャル文化に共感できる人たちは思った以上に少数派。さらにその少数派の人たちは朝ドラを見ていない集団であるということだろう。
今後に期待できるのか?
「時代設定が現代の朝ドラはヒットしない」というセオリーがあるが、主人公が若者で、コアな視聴者が中高年層となると、共感できるところが少なくなってしまうことはやむをえない。
2013年度の朝ドラ『あまちゃん』は、若者層を中心に大きく盛り上がり、社会現象にもなったのだが、視聴率は特別高かったわけでもなく、平均視聴率は、その後の『ごちそうさん』や『花子とアン』のほうが高かった。
『あまちゃん』の時代設定は現代だったが、主人公の天野アキの親世代、祖父母世代の時代も描かれており、中高年の視聴者にとっても、ノスタルジーが感じられる内容になっていた。現代の物語であったが、中高年の視聴者を逃さないための工夫が凝らされていることがうかがえる。
一方、『おむすび』の時代は、朝ドラのコア視聴者である中高年層にとっては、少しばかり近すぎて、懐かしむべき過去として捉えられないように思える。彼らにとって、20年前は、青春時代でもなんでもないのだ。
『おむすび』が平成ギャルを扱ったのは、視聴者を引き付ける要素としては弱いし、現時点ではストーリー上の必然性があるようには見えない。
直近では、ギャルを捨てたヒロイン・結(橋本環奈)の姉の歩(仲里依紗)が登場し、本筋の伏線となるような過去の回想も描かれてきており、ギャルの世界は描かれながらも、やっと朝ドラらしい広がりが見えはじめている。
今後、『おむすび』は、朝ドラとしてどう着地させることができるのか? 物語の展開とともに興味あるところである。筆者としては、もう少しこのドラマに付き合ってみようか――と思っている。
西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
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