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舗装の下から線路が…56年ぶり出現「都電の遺構」 東京都内には鉄道の遺跡が数多く眠っている

東洋経済オンライン / 2024年10月29日 6時30分

ただ、この遺構を研究や展示などの用途で使用する場合には、無償で譲渡するとしている。河川工事担当者は「すでに数団体から申し込みがあります」とのことだ。貴重な遺構だけにぜひとも保存されることを願っている。

なぜ道路から遺構が見つかるのか

さて今回の白鳥橋に出現した都電の遺構だが、2019年にお茶の水橋の補修工事でもレールと敷石が発見されている。それ以前にも日比谷付近のアスファルトが車のタイヤで擦られ、線路が顔を出したことがある。なぜこのように道路から遺構が見つかるのだろうか。それをひもとくカギは、廃止時の処置にあった。

都電のレールは、一見すると道路に埋まっているように思われるが、実際は普通の鉄道のように、枕木でレールが固定されている。敷設する際は、道路面に溝を掘り、砂利を引き、その上に枕木とレールを設置し、自動車や人が通行するように、レール周辺を御影石などの敷石で固定する仕組みだ。

ただ、近年ではコンクリート軌道ブロック(コンクリート製のプレート)に溝を掘り、締結金具で線路を固定する方法や、締結金具の代わりに樹脂を用いる方法などもある。

路面電車の線路は一般の線路と異なり、車輪のフランジ(出っ張り)が通過する溝を付けた溝付きレールを使用することが多いが、直線区間などでは、普通のレールも使用されていたようだ。今回発見されたレールは溝付きで、いかにも路面電車らしい。

線路の敷石は、通常線路に対して垂直に敷かれることが多いが、この白鳥橋とお茶の水橋では、長方形の敷石がレールに沿っている。なぜこのような仕様になったのか。当初は橋の上だからかと思っていたが、筆者が所蔵する写真では、新大橋を渡る36系統の敷石は垂直になっている。ということは、単に橋の上だからではなく、狭い橋などでの保線作業を容易にするためではないだろうか。レールの交換の際、垂直よりもレールに沿っているほうが、敷石を外しやすく場所も取らない。もちろん、これは推測にすぎない。

都電の線路は東京中に眠っている

昭和40年代頃から自動車が急速に普及し道路の渋滞が激しくなった。当時は車優先の社会で、都電は次々と廃止に追い込まれた。通常なら路線が廃止されれば、レールや枕木は撤去されるが、併用軌道のレールは道路面と同じ高さのため、停留場などの突起物を撤去し、上からアスファルトで舗装すれば、すぐに道路として活用できた。工事費用も日数もかからないこの方法が、当時としてはべストだったのだろう。

筆者が所蔵する写真に、新宿駅前から出ていた12・13系統の廃止日の写真がある。最終電車が出発した数分後、作業員がツルハシで停留場の撤去を開始しており、翌日にはアスファルトで舗装されたようだ。それほど当時の道路状況は切迫していた。

現在も日比谷や日本橋、銀座など、かつて都電が走っていた道路下には、レールと敷石が眠っているはずだ。すべてのアスファルトを撤去して都電復活……。これは筆者の妄想と夢である。

渡部 史絵:鉄道ジャーナリスト

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