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宇宙ベンチャー「ispace」が大型増資をする思惑 株価上昇前提で調達手法の利点を強調する事情

東洋経済オンライン / 2024年10月30日 7時40分

株式市場の重要な役割の1つにリスクマネーの供給がある。宇宙ビジネスというハイリスク・先行投資型事業の立ち上げを目指すispaceにとって、株式市場の信頼と期待をつなぎとめることは重要だ(撮影:梅谷秀司)

「世界を代表する金融グループからの大型出資は、当社のビジョンと成長戦略を高く評価していただけたから。大変な栄誉だ」

【グラフ】宇宙ベンチャー「ispace」の厳しい台所事情

月面輸送サービスの実現をめざす宇宙ベンチャーのispaceは10月11日、米機関投資家のハイツ・キャピタル・マネジメント・インクを引受先に、第三者割当増資を実施すると発表した。普通株式の新株発行と新株予約権を組み合わせ、調達額は最大で237億円に達する。ispaceの袴田武史CEOは同日の説明会で冒頭のように述べ、ポジティブな増資であることを強調した。

ただ、発表時点での時価総額が616億円の同社にとって、この増資による希薄化率は最大で23.58%になる。また、今年3月には海外での公募増資で84億円弱を調達したばかり。今回の大型増資は既存株主には気がかりな面もある。

4回に分けて普通株と新株予約権を発行

第三者割当増資のスキームは、ややテクニカルだ。

普通株式、新株予約権とも発行数は4回に均等分散する。2024年10月11日、11月18日、2025年1月14日、3月11日を発行決議日に設定。それぞれ前日の終値をベースに、普通株式はその90%を発行価額、新株予約権はプレミアムを載せて120%を行使価額とする(権利行使期間は4年間)。

つまり、すでに発行決議日を過ぎた1回目を除き、普通株式による調達額は各決議日前日の終値次第で変わる。価額には上限があり、株価が高かった場合の増資額は、普通株式で最大101億円。新株予約権は、もしフルに行使されれば最大136億円という内訳だ。

こうしたスキームを採用した理由について、会社側は「株価への配慮」と「今後の株価上昇のポテンシャルを取り込むため」というメリットを挙げる。

一度に大量の新株を発行するのではなく、4回に分けることで株価へのインパクトを分散させる狙いがある。加えて、株価が上がれば調達額を増やすことができるため、将来的な希薄化も抑えられると主張する。

また、新株予約権の行使価額を、各決議日前日終値の120%としたことも「株価がそれ以上にならなければ行使されない(=希薄化しない)」ため、株価への配慮となるという。

もっとも、「調達額を増やすことができる」のは、あくまでも株価が上昇した場合の話。目論見に反して株価が下がると調達額も減ることになる。新株予約権分については、各決議前日以降に株価が上がらなければ調達にさえつながらない。

低迷する株価の引き上げを狙う

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