中国新興EV「零跑汽車」、海外進出を急加速の野望 資本提携先のステランティスの拠点を活用
東洋経済オンライン / 2024年10月31日 8時30分
中国の新興EV(電気自動車)メーカーの零跑汽車(リープモーター、正式社名は零跑科技)が、海外市場への進出を急加速しようとしている。
同社は10月14日、フランスでのパリ・モーターショーの開催期間中に海外事業戦略を発表。2025年末までにヨーロッパ市場に500カ所の販売拠点を設ける目標を掲げたほか、2024年10~12月からアジア太平洋、中東、アフリカ、南アメリカなどで市場開拓を開始すると宣言した。
この野心的な計画を下支えするのが、ヨーロッパ自動車大手のステランティスとの協業関係だ。零跑汽車の創業者で董事長(会長に相当)を務める朱江明氏によれば、同社は(海外市場開拓の過程で)ステランティスが世界各地に張り巡らした10万カ所を超える販売・サービス拠点や、それらをつなぐ物流網を活用できるという。
海外事業の合弁会社を設立
零跑汽車とステランティスの協業は2023年10月、ステランティスが約15億ユーロ(約2441億円)を投じて零跑汽車の発行済株式の約20%を取得したことで始まった。この資本提携の時点から、両社は零跑汽車の海外事業を専門に手がける合弁会社の設立に合意していた。
そして2024年5月、ステランティスが51%、零跑汽車が49%を出資して「零跑国際(リープモーター・インターナショナル)」が発足。同社には零跑汽車のEVを大中華圏以外のグローバル市場で販売する権利や、中国以外の国・地域で現地生産を行う権利が独占的に付与された。
朱董事長に言わせれば、ステランティスとの協業は(中国の新興企業が)海外市場への進出を最短の時間かつ最少の投資で実現できる新たなビジネスモデルだ。
「われわれはヨーロッパ市場で、2024年末までに300カ所の販売拠点を設けること目指している。仮に自社だけで進めたら、これほど短期間でやり遂げるのは非常に困難だ」(朱董事長)
零跑汽車はすでに2024年9月から、ヨーロッパ市場で2車種のEVの販売を開始。今後も毎年1~2車種のニューモデルをヨーロッパ市場に投入していく予定だ。
そんな中、気になるのが中国製EVに対する欧州連合(EU)の追加関税の影響だ。EU加盟国は10月4日に実施した投票で、欧州委員会(訳注:EUの政策執行機関)の反補助金調査に基づく追加関税の提案を可決、11月から適用することが決まった。
ポーランドの工場で試験生産
この問題への対応について、朱董事長は自身の考えを次のように述べた。
「海外市場で(中国メーカーが)自動車を大量販売したいなら、関税問題の有無にかかわらず、現地生産以外の選択肢はない」
ステランティスは2024年6月、同社のポーランドの工場で零跑汽車のEVの試験生産を行ったことを明らかにした。だが、その後の進捗に関する具体的な情報は開示していない。
「EUの追加関税を回避するには、車両の現地生産だけでは不十分だ。ヨーロッパ製の部品の調達率も一定以上に引き上げる必要があり、(追加関税の)細則の発表を待たなければならない」
零跑汽車の高級副総裁(副社長に相当)を務める曹力氏は財新記者の取材に対し、追加関税の問題は見た目よりも複雑だと説明した。
(財新記者:翟少輝、余聡)
※原文の配信は10月16日
財新 Biz&Tech
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