指導者に「大きくて強そうな人」を選ぶ残念な本能 通用しなくなったのに残る石器時代の思考法
東洋経済オンライン / 2024年11月1日 10時0分
狩猟採集社会は現代社会よりも平たかった。だが、それらの社会にも、依然として非公式な指導者がいて、たとえば、みなを組織して狩猟の遠征に出ただろうし、集団での意思決定のときにある程度の影響力を獲得したかもしれない。
そのような非公式のリーダーシップは、特定のタイプの人に適していた。ファン・フフトが説明しているように、「祖先の人間たちの間でのリーダーシップは、狩猟や戦争といった、身体的活動で発揮されることが多かった。リーダーは模範を示し、しばしば先頭に立って指導したので、健康やスタミナや堂々たる体軀(たいく)といった、選択の手掛かりがあったことだろう」。
それは、たんに大きい人や力の強い人への好みにとどまらなかった。指導者は、進化の過程で積極的に選ばれた。
狩猟や、ライバルのバンド(小さな生活集団)との戦いのときに身体的に弱い指導者を選んだバンドは、メンバーが死ぬ可能性が高まったので、そのような誤りを犯した人は、人類の遺伝子プールから間引かれた。
生死の瀬戸際に、身体的に強い指導者を選んだバンドは、生き延びる可能性が高く、そのような選択をする傾向が強まった。
時代後れとなった本能
このように考えてみるといい。過去20万年には、およそ8000世代の人間が存在してきた。そのうちの7980世代ほどが、大きくて強いことが生存にとって主要な利点である社会で暮らしていた。
それは、ヒトという種の歴史の約99.8%に当たる。その認識から、「進化的リーダーシップ理論」と呼ばれるものが生まれた。
私たちの社会的な世界は変化したが、脳は変わっていない。人間が学習した指導者選択の理由は、現代にはもう現実を反映していない。だから、そのような時代後れの本能は捨てる時が来た。
(翻訳:柴田裕之)
ブライアン・クラース:ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン准教授
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