公取委の異例対応で際立つ損保大手の悪しき体質 いまだにくすぶる500超のカルテル疑義事案
東洋経済オンライン / 2024年11月2日 7時30分
「公正取引委員会としては、この(排除措置と課徴金納付の)命令を確実かつ速やかに実行してもらうとともに、再発防止に万全の対応をするよう強く求める」
10月31日午前10時。東京・霞が関の中央合同庁舎6号館の会議室で、公取委の大胡勝審査局長はそう言って行政処分を言い渡した。
大胡局長の言葉をかみしめるようにして聞いていたのは、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損害保険、東京海上日動火災保険の4社と保険代理店・共立の社長、総勢5人だ。
損保大手4社はいずれも、企業・団体向けの共同保険などで、提示する保険料を事前に調整するカルテルや入札談合という独占禁止法上の違反行為(不当な取引制限)があったと、公取委の審査によって今回認定された。
同違反行為が認められた契約案件は、国内最大の発電事業会社であるJERA、コスモ石油、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、シャープ、京成電鉄、警視庁、東京都、仙台国際空港、東急向けのもので計9件。課徴金総額は20億7164万円に上る。
3つの部隊が厳密な審査にあたる「異例の事態」
幅広い業種にまたがる違反行為であったことから、公取委の5つある審査部隊のうち第一、第四、第五の3つの部隊がそれぞれ厳密な審査にあたるという「異例の事態」(公取委幹部)だった。
異例なのはそれだけではない。処分対象者を集めて申し渡す場面を、わざわざ報道陣に公開するというのも「記憶の限りでは初めて」(大胡局長)の対応だ。
また違反行為の主な舞台となった企業・団体向けの共同保険について、「損害保険会社等の間で協調的行動がとられやすく独占禁止法上の問題が生じやすい構造がある」などと、厳しく指摘する別添資料を出すというのも、通常ではあり得ないものだった。
なぜそこまで異例ずくめの対応となったのか。
理由は大きく2つに分けられる。
1つ目は、損保業界の法令順守意識の低さだ。
市場の9割近くを握り、日本を代表する金融機関にもかかわらず、「多岐にわたって数多くの違反行為をしており(中略)一従業員、一組織の問題ではなく、会社としての体質が問われる」(大胡局長)とまで糾弾されてしまうのが、損保業界の実情だ。
そもそも損保業界は、1990年代に損保各社で構成する日本機械保険連盟(1997年に解散)や、自動車の修理工賃(レバーレート)においてカルテル行為が認められたことで、公取委から勧告や警告を受けた経緯がある。
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