「競争なんてしなくていい」で育つ子どもの不幸 和田秀樹「勝ち負け不要」でも社会は競争だらけ
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 14時0分
そのため学校では「競争はしなくていい」「勝ち負けは不要」などと言われて育ちますが、実際に社会に出たらそうはいきません。
学歴による選別が行われ、社会に出た後も競争を強いられます。そこで負ければ叱責されたり、減給されたり、リストラされることもあります。競争なんてしなくていいと言われて育ってきたのに、実際には超競争社会。それが今の日本社会です。
言葉は悪いですが、それは大事なペットとして育てた動物をジャングルに放つようなものと言えるでしょう。子ども時代は絶対に傷つけないような配慮をされていた子どもが、いざ社会に出てうまくやっていけると考えるのは甘い考えなのではないでしょうか。
子どもが大人になってからジャングルの中でもたくましく生き延びてほしいのであれば、多少は競争に慣れさせて育てたほうがいいと考えています。
社会に出てから困るのは子ども
それから親御さんの懸念という意味では、負けん気が強い、あるいは自信の強い子どもの場合、我が子が周りから嫌われてしまうのではないかと気にする親御さんも多いのですが、よほど極端な子でなければ、社会に出ると性格が丸くなっていくものです。
たとえば、レベルの高い学校に入ると、自分よりも成績のいい人がたくさんいることを知って「これはまずい」と危機感を感じます。
社会人になって現実を見れば、自分の足りなさに気づくこともあります。
私自身もそうでしたが、社会経験を積むことによってどんどん角が取れていく人も多いです。社会で成功して恵まれた環境にいるうちに気持ちの余裕が出てきて、性格が鷹揚(おうよう)になっていく人も少なくありません。
その反対に、「競争なんてしなくていい」「やさしければいい」と言われ、最初から勝負することをあきらめて育った結果、社会に出てみたら、自分の希望する職に就けないし、待遇のいい企業にも入れないという現実を知って絶望し、世間や社会に対して不満を抱くようになる可能性もあるのです。
自分に自信を持てないせいで社会でうまくやっていけないという人も、精神科医としてたくさん見てきました。
競争なんてしなくていいと言われて育った結果、社会に出てから競争社会の厳しい現実に直面する。それは、ある意味では不幸と言えるのではないでしょうか。
もちろん、その子ができないのに、厳しい競争を強いて苦しい思いをさせるのはよくありません。そのためにも、親は小さい頃から子どもの得意なことを見つけて育て、子どもに自信をつけさせる必要があるのです。
子どもの「負けん気」は伸ばしてあげて
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