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がんになったIT経営者が直面した「葛藤と現実」 2度の治療で「身長176センチ、体重46キロ」に

東洋経済オンライン / 2024年11月4日 16時0分

しかし、リハビリを続けながら少しずつ会社に顔を出せるようになってしばらくすると、幹部社員から、

「高山さんがたまに会社に来て社員に指示を出すと現場が混乱します。100%働けるようになったら会社に戻ってきてください。それまでは会社は自分たちが守りますから、高山さんは療養に専念してください」

と言われてしまいます。

思いがけず老害の一歩手前、いや老害そのものになっていました。

そして、あるとき気づきました。ここからどんなにリハビリに励んだとしても70%程度まで回復するのがいいところではないか。100%、いや90%にすら戻すのは無理なのではないか、と。

つまり、もう以前のように仕事をすることはできないと悟ってしまったのです。

もはや経営者として以前のように自分が納得できるような働き方ができないのであれば、自分はどうすべきか。何カ月も悩みました。

そうして悩みに悩んだ結果、仕事も、経営者の立場も、そして会社そのものも手放すのが、自分にとっても会社にとっても一番よいという考えに至りました。
 中途半端に会社にぶら下がり、創業者で大株主であるというだけで、大した仕事もせずに会社から給料を吸い上げるようなことはしたくありません。だったらきっぱりと会社から身を引こう、と思ったのです。

とは言え、自分のアイデンティティでもある会社を本当に手放せるのか。

そもそも自分の収入がなくなったら、家族3人でどうやって食べていくのか。

しかしある日、妻の言葉で目が覚めました。

「会社を売却したら、もう何もやらなくていいんじゃない? 私も仕事をしてるんだし。仮に働く必要がなくて、やりたいことだけやればいい状況になったとして、それでもどうしても仕事がやりたいのであれば仕事をすればいいけど、そうでないなら無理に何かをしようとする必要はないよ」

この言葉には衝撃を受けました。「そうか、何もしないという選択肢があったのか」と。

自分が勝手に縛られていた固定観念を初めて疑うことになりました。会社に固執せず、思い切って手放すことで、また新しい人生がひらけるかもしれない、と思うようになっていきました。

友人や先輩に相談しながら、会社の売却について具体的に検討し始めました。ベンチャー企業のM&Aの専門家を何人か紹介してもらって相談していきました。

会社は自分の子どもであり自分自身でもある

創業者にとって、自分が立ち上げた会社は自分の子どものようなものだとよく言われます。私にとってはアイデンティティ、つまり自分自身でもあります。

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