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「センサリールーム」導入の先駆者・川崎Fの使命 発達障害・感覚過敏のある子もサッカー観戦を

東洋経済オンライン / 2024年11月5日 8時0分

──参加した子どもたちや、プロジェクトに関わった選手からは、どのような反応がありましたか?

子どもたちが、センサリールームや特性に合わせたおもちゃなど、落ち着いて観戦できる環境があることにとても安心してくれたことが印象的でした。イベント前に配布された「しおり」(ANA制作)も、文字を読むことに抵抗があるお子さんに優しい作りで喜んでいただけました。また、選手と交流できてうれしかったという声もたくさんもらいます。感動して泣いてしまうお子さんもいましたね。

またご家族からは、「子どもたちを安心して任せられる環境だった」という声をいただきます。「えがお共創プロジェクト」でこうした環境を提供できたことを非常に嬉しく思っています。

一方で、それまで発達障がいのお子さんと触れ合う機会がなかった選手からは、「子どもたちのことをもっと知りたいと思うようになった」というフィードバックがありました。「子どもたちが困っていることは何だろう、僕たちにできることは何だろう」と真剣に考えるようになった選手もいます。

センサリールームの設置をスポーツ界にさらに広げたい

──「えがお共創プロジェクト」で改善したいところはありますか。

現在は小学生のお子さんとその家族を対象にしていますが、参加してくれた子が大きくなってもまた会えるように、「中学生や高校生の発達障がいの子どもが参加できる企画もほしい」という意見をいただき、検討を進めています。またこのプロジェクトは、発達障がいのお子さんの“家族”も気兼ねなくサッカーを楽しめることをテーマに掲げています。普段なかなかスタジアムに足を運べないサポーターのご家族もリラックスできる場づくりを意識したいですね。

──センサリールームをスタジアムに常設するにはどのようなハードルがあるのでしょうか?

例えばプロ野球の場合、チームが自前でスタジアムを持っていることが多く、チームの意向を単独で反映しやすいのではないでしょうか。しかし、ほとんどのサッカーチームはスタジアムが自前でないため、自治体が賛同したうえで進めることになります。

──「えがお共創プロジェクト」で連携したJリーグ・セレッソ大阪は、2022年4月以降でセンサリールームを常設しましたね。

われわれのプロジェクトの趣旨に賛同していただき、2021年11月、試験的にヨドコウ桜スタジアムにセンサリールームを設置したことがきっかけと伺っています。その半年後には常設の運びとなり、こちらとしても喜ばしい限りです。私も、現地へ視察に行かせていただきました。

センサリールームの取り組みをスポーツ界に浸透させることは、プロサッカークラブとして、そしてセンサリールーム導入の先駆者としての使命だと感じています。

そのためには、サッカークラブ間の連携、ひいてはスポーツのジャンルの垣根を超えた連携が大切です。ホームタウンやスポンサーとのつながりを大事にしながら、誰もがスポーツを楽しめる社会を目指して、輪を大きく広げられたらと願っています。

せきねみき:ライター・コラムニスト・編集者

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