損保ジャパン、東京海上…AIで進化する「保険業務」 引き受け判断や、人工衛星データ分析に活用
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 7時50分
生命保険会社、損害保険会社問わず、「社会課題解決」が大きなテーマになっている。「週刊東洋経済」の臨時増刊「生保・損保特集号」は、保険会社の生き残りの条件となった社会課題解決への各社の取り組みをリポート。
さらに各社トップへのインタビューや、資産形成サービス、ヘルスケア、AI・テクノロジーなど最新の動きも網羅した。その誌面から、注目記事をお届けする。ここでは生損保各社におけるテクノロジー活用の最新動向を紹介する(前編はこちら)。
高性能音声解析技術で話し手を識別
三井住友海上はこのほど、保険金支払い部門にかかってくる通話音声のテキスト化と通話内容の要約、悪質クレーム対策を実現するシステム「MS-Assistant」を稼働させ、今年3月から一部の保険金支払いセンターで運用を開始した。
【図表】あいおいニッセイ同和損保が開発したAI不正検知システム
高性能音声解析技術を使って話し手を識別し、事故対応で頻繁に出てくる専門用語を学習させて高精度なテキストを作成。要約にはマイクロソフト社の生成AIを利用した。
テキスト化された通話内容は即座に要約され、担当者が内容を確認したうえで保険金支払い基幹システムに登録される。
担当者と顧客との通話の中では、リアルタイムで通話内容をテキスト化。悪質クレームキーワードを自動検知し、管理者にメール通知する。基幹システムには生成AIによる通話内容が自動要約され、経過記録詳細欄に約500字で保存される。
「担当者が悪質クレームを受けても我慢して対応したり、管理者によっては悪質クレームを受けていることに気づかなかったりした。システムが稼働して発生状況が『見える化』され、現場の対応力が向上している」(業務プロセスデザイン部)。
2カ月の審査が2~3時間に短縮
損害保険ジャパンは、保険引受システム「アンダーライティングイノベーションプロジェクト」にAI機能を搭載し、人が担ってきた引受判断のルールをAIに学習させて効率化している。
このプロジェクトは20年度より、企業向け火災保険から適用を開始し、ほかの種目への展開を狙っている。企業向けの火災保険はオーダーメイドで、当該企業が持つリスクを総合的に判断し、引き受ける場合の保険料や引受額を決める。
オフィス・工場の構造、施設内の設備や機器、業種、業務内容などリスクは多岐にわたり、引受業務は膨大なデータを読み込んで判断しなければならない。同社はこの作業に際して、データ統合・分析システム「ファウンドリー」を導入、23年から引受申請機能が稼働した。
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