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豪華列車「ななつ星」乗務員の知られざる研修内容 社外公募を含む多様な人材が1年の研修を受けた

東洋経済オンライン / 2024年11月6日 7時0分

車掌出身の渡邊さんの場合、これはなかなか苦労の多かった研修だったようで、ホテルの宴会場で給仕の際、片手に持っていたお皿から料理が転がり落ちたのに気づかず、空っぽの皿をお客さまに提供してしまったり。客室案内の勝手がわからず、フロア内でお客さまを端から端まで移動させてしまったり。

今なら笑い話ですけど。当時は、冷や汗では済まないような失敗も重ねたといいます。

一方、社外組はホテルでの勤務、あるいは滞在も豊富な面々だったので、由布院の「玉の湯」「亀の井別荘」「山荘無量塔」といった名旅館へ研修というか半ば“修業”へ。

ホテルオークラの料飲部門で長く勤務した数澤さんや、航空業界の経験が長い小川さんは、それぞれの宿で働く方々の、お客さまに向ける「気」のこまやかさにたいへん感銘を受けたと振り返ります。

ななつ星のクルーの仕事は、お客さまにお乗りいただいてからお帰りになるまでの3泊4日あるいは1泊2日、ずっと一緒に同じ車内で過ごします。お料理も運ぶ、荷物も運ぶ、片付ける、掃除もする。そして、なにより臨機応変に多様なリクエストに応じます。

名旅館の仲居さんや、一流ホテルのバトラー、ベルボーイの役目をハイブリッドにこなしているようなものです。

「全人格を以て」接する

こうした実地研修を終えて、彼らがたどり着いたのが「お客さまの家族の一員、大切な友人の一人となってお客さまに寄り添うサービスを提供する」という理念です。

それも「全人格を以て」お客さまに接していくと、みんなで決めてくれました。

じつは私は、1回目の講義のときに彼等に「君たちオリジナルのななつ星のサービスを考えてほしい」と話していました。

誰かに言われたとおりにするのではなく、研修を通して、ななつ星オリジナルの「おもてなし」を新しく創造してほしいと伝えていたのです。

クルー1期生の彼らは、私のリクエストを非常に意気に感じてくれたようです。メンバーで集まると、主語を「ななつ星は」とか「お客さまは」としながら、「あの旅館はこんなサービスをしていたから、ななつ星ではこんなことができる」といったことで話に花を咲かせていたそうです。

唐池 恒二:九州旅客鉄道株式会社 相談役

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