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大阪が世界に誇るバリアフリー先進都市である訳 ハード面でもハート面でも体現するDE&I

東洋経済オンライン / 2024年11月6日 12時0分

海外から訪れた人たちは、きっと驚いたはずです。視覚障害者が一人で安全に移動できること、突起物を並べて危険地帯と安全地帯を分ける発想。そのどちらも、当時の世界では他に類を見ないものでした。

現在では、150カ国を超える世界中の国で点字ブロックが設置され、視覚障害者の社会参加を後押ししています。万博がその一つのきっかけになったことを、私は日本人として誇らしく感じます。

ハードもハートも先端を行く大阪

大阪は世界に冠たるバリアフリー都市です。地下鉄谷町線の喜連瓜破【きれうりわり】駅に、日本の地下鉄で初となるエレベーターが設置されたのは1980年。駅にエレベーターを設置するという発想そのものが一般的ではなかった頃でした。

さらにさかのぼること半世紀、1931年には、明治維新の混乱で消失した大阪城天守閣の再建にあたってエレベーターが設置されています。文化的価値が高い城跡へのエレベーター設置の是非については、現在でも意見の分かれるところです。しかも、今ほどバリアフリーに対する理解が進んでいない90年前の判断であることを考えれば、実に思い切った施策といえるでしょう。

さまざまなバックボーンを持つ人々を受け入れてきた歴史、個性の強さやユニークさをよしとする気質。多彩な要素が、障害者に対して壁をつくらない、大阪における風土醸成に寄与しているようです。

大阪のダイバーシティは、身近なところにもあふれています。車いすを使用する私が客引きされたのは、これまでの人生で数えるほどです。そのうちの一回が関西屈指のコリアンタウン・鶴橋でのことでした。満面の笑顔で私に近寄ってきた焼肉店のお兄さんが、「1階のテーブル席が空いていますよ!」と声をかけてくれたのです。2階席でもカウンターでもなく、「1階のテーブル席」。

利用者の視点に立った想像力と的確な情報提供に、思わず握手をしてしまうくらい感動しました。誰に言われたのでもなく、車いすユーザーへの「合理的配慮」が見事になされています。そこにあるのは慈悲の心でも社会貢献の精神でもなく、自慢の焼肉を一人でも多くの客に食べてほしいという思い、より率直に言うなら、たくましい商魂でしょう。これこそが、私が多くの方に持っていただきたい視点です。

ビジネスチャンスとしてのDE&I

2024年の4月から施行された改正障害者差別解消法の下では、合理的配慮を提供しない企業は罰せられる可能性があります。そこまで行かずとも、企業としての評判(レピュテーション)を毀損することは避けられません。これほどDE&Iが言われる中にあって、取り組みが不十分な企業は、好感と信頼を得るのが難しいからです。そうなれば顧客や取引先、投資家、そして、社員が離れていくことも十分に予想されます。

しかし、真に注目すべきは、そうしたマイナスの面ではなくプラスの面、企業として成長するチャンスを自ら放棄してしまうことです。

垣内 俊哉:株式会社ミライロ代表取締役社長

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