中国の風力発電装置、新興国市場への輸出に商機 価格競争力を武器に再エネシフトの需要獲得へ
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 18時0分
世界の風力発電所の設備容量は2024年から2030年にかけて1200GW(ギガワット)の増加が見込まれる。その結果、(既存の風力発電所を合わせた)2030年時点の世界の総設備容量は2000GWを突破する――。
風力発電産業の国際的な業界団体、世界風力会議(GWEC)の戦略ディレクターを務める趙鋒氏は10月16日、北京で開催された年次イベント「チャイナ・ウインドパワー」でそのような予想を披露した。
アジア太平洋が最大の市場に
趙氏によれば、2030年にかけて増加する1200GWのうち6割はアジア太平洋地域に導入される見通しで、(世界各国が掲げる)再生可能エネルギーへの転換や気候変動対策の目標達成に向けて重要な役割を担うことになるという。
同じイベントでは、情報サービス会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の専門アナリストの陳相羽氏から、中国の風力発電装置メーカーの海外市場開拓が中央アジア、東南アジア、アフリカ、南アメリカなどの新興国に集中しているというデータも示された。
BNEFの推計によれば、これらの新興国に中国メーカーが2024~2030年に輸出する風力発電装置の設備容量は110GWに達する見通しだ。
中国は世界で群を抜く風力発電大国であり、2023年の新規導入量は全世界の65%を占めた。同年の国別の新規導入量は、アメリカが中国に続く第2位、ブラジルが第3位、ドイツが第4位、インドが第5位だった。
一方、新規導入量の前年比の伸びを見ると、アジア太平洋地域は2022年からほぼ倍増、アフリカおよび中東地域は同2.8倍に増加したのが目立つ。さらに今後は、中央アジア、東南アジア、東ヨーロッパなどでも大幅な増加が期待されている。
その背景には、(新興国においても)各国の政府が再生可能エネルギーへの転換に本腰を入れ、導入目標を明確に打ち出していることがある。風力発電装置のコスト競争力で優位にある中国メーカーにとって、新興国市場の魅力が増していると言えそうだ。
欧米メーカーは本拠地回帰
BNEFのデータによれば、2024年前半時点の陸上用風力発電装置の市場価格は、中国国外では定格出力1kW当たり1000ドル(約14万9800円)前後だったのに対し、中国国内では3分の1未満の約300ドル(約4万5000円)だった。
「風力発電装置の部品コストは過去2年間で多少下がったものの、中東情勢の緊迫に伴う物流コストの上昇などにより、欧米の風力発電装置メーカーは輸出競争力が低下した」(BNEFの陳氏)
そんな中、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)や欧州のシーメンス・ガメサなどの大手は(利益を確保しやすい)欧米市場への回帰を強めている。そうした動きが「中国メーカーに新興国市場への輸出拡大のチャンスをもたらしている」と、陳氏は指摘した。
(財新記者:趙煊)
※原文の配信は10月18日
財新 Biz&Tech
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