なぜ「背の高い男性」をリーダーに選びがちなのか 「時代後れの脳」のせいで身長が収入も左右する
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 9時40分
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
身長は地位を判断する材料?
2000年以上前、アレクサンドロス大王は、捕虜になったペルシアの女王シシュガンビスの謁見を許した。アレクサンドロスのそばには、親友のヘファイスティオンがいた。彼のほうがアレクサンドロスよりも背が高かった。
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ヘファイスティオンのことを大王だと勘違いしたシシュガンビスは、ただちに彼の前にひざまずいて命乞いをしたという。理解できるとはいえ、重大な侮辱だ(いずれにしても、アレクサンドロスは彼女の命を助けた)。
それでも、それが意味するところは明らかだった。身長は、地位を判断する優れた材料だと思われていたのだ。
およそ2000年後の1675年、プロイセン軍は「ポツダム巨人軍」という歩兵連隊を編制した。
この連隊の唯一の際立った特徴は、所属する兵士が長身であることだった。このエリート連隊に入隊するには、身長が最低6フィート2インチ(約188センチメートル)なければならなかった。当時とすれば、並外れた背の高さだ。
プロイセン王のフリードリヒ・ヴィルヘルム1世(在位1713〜1740年)は、どうやら普通の君主よりも変わっていたようで、病床にあったとき、これらの長身の兵士たちを目の前で行進させて、自らを元気づけた。
彼は、訪れていたフランス大使にポツダム巨人軍を披露した折には、「世界一美しい娘や婦人には関心がないが、背の高い兵士たちに私は目がない」と言った。
王の執着はとどまる所を知らず、彼はヨーロッパ中の長身の人々を拉致して兵士にしたと言われている。
あるときなど、(当時とすれば巨額の)1000ポンドも払って、ロンドン市街でアイルランド人の巨人を捕まえる作戦を実施した。
このような拉致の企ての費用が嵩(かさ)むと、背の高い人に子どもをもうけさせようとし、長身の男性を無理やり長身の女性と結婚させ、長身の赤ん坊には未来の兵士とわかるように、赤いスカーフで印をつけた。
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