ユニクロ「柳井正氏に頼らない」仕組み化の中身 熱意だけでは従業員を変えることはできない
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 10時30分
ユニクロが特筆すべきは、「究極の個店経営」を実践するためにいくつかの仕組みを用意して、うまく機能させているところにあります。ユニクロが体制を一気に変えられた理由は、スタッフの教育の仕組みと雇用の仕組みを見直したところにあります。
店舗スタッフの教育はそれまでは店長に一任されていました。本部はノータッチで完全に店長任せなので、当然、教育にはバラつきが生まれます。教育に熱心な店長もいれば、ほとんど関心を示さない店長もいます。熱心でも教え方や内容は千差万別です。
そもそも、店舗スタッフは店長に言われたことを忠実にこなすことが仕事で、自分で考えることは求められていませんでした。店長が最前線である売り場に立ち、指揮官として、本部とコミュニケーションをとり、知恵を絞る。その施策を忠実に履行するのが店舗スタッフの役割でした。本部としても、スタッフ教育にそれほどコストをかける必要もなかったわけです。
「究極の個店経営」になっても組織図は一見変わりません。本部があって、店舗があります。スーパーバイザーやブロックリーダーと呼ばれる本部社員が、各店舗を支援する体制も変わりません。
ですが、誰が「主役」となり、どこを向いて働くのかが変わります。地域にいる店舗スタッフならではの独自の発想で、地域の顧客を呼び込み、その心をつかむことが成長のエンジンになります。
当然、店舗スタッフにしてみればマインドも行動も180度変わることになりますが、そうしたマインドや行動を教えられる店長はあまり多くいません。これまで現場教育に会社としてそこまで力を入れてこなかったのでこれは当然です。そこで、現場に任せ切りにするのをやめて、本部で仕組みをつくることになったのです。
「ユニクロの理念」を浸透させる
まず、私たちが何をしたかというと「ユニクロの理念」を理解してもらうように努めました。「企業として何をやろうとしているか、その背景にはどうした考えがあるのか」を理解してもらえないと、スタッフの人たちの行動を変えられないからです。人は「What」だけでは動きません。重要なのは「Why」です。
地域ごとに店舗スタッフを集めて、企業の方針を理解してもらうためのダイレクトミーティングを開催しました。ユニクロが「店舗スタッフを主役にした地域に根ざした個店経営」をなぜ目指しているかや、企業としての理念を伝えました。そのうえでユニクロの店舗で働く意味を考えてもらい、ユニクロの理念を「自分事化」してもらうことで、ひとりひとりに経営者マインドを根づかせるように試みました。
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