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菜々緒が「アホなコンサル」ドラマの"意外な深さ" 無能な人も有能な人も刺さる「無能の鷹」の魅力

東洋経済オンライン / 2024年11月7日 8時40分

とはいえ鷹野自体は通常運転で、ずっと頓珍漢な受け答えをしていただけなのだが、先方が鷹野の優秀オーラにあてられ“気の利いた冗談が言える明るい上司”だと勘違いしたのだ。

遅れて参加した鶸田は、プレゼンをしながらふと、いつもより滑らかに話せている自分に気づく。先ほどのアイスブレイクで好感触を得た鷹野が隣にいることで、クライアントが鶸田に向ける空気が柔らかくなったのである。

実態はポンコツだが、見た目は余裕たっぷりでスマートな鷹野と、対外コミュニケーションが苦手だが実務能力はある鶸田。互いの特性を活かしたポジションで戦うことで、劇的な成長などしなくても状況がするっと好転したのだ。

このエピソードは、個人が持つ特性とポジションとの食い合わせ次第で、パフォーマンスの精度が天と地ほど変わることをわかりやすく描いている。逆を返すと、働く環境を構成する何かしらの要素が本人にとって“致命的な障壁”であった場合、誰でも無能になる可能性があるということだ。

これを「適材適所」と言い換えるとシンプルだが、今回の鷹野と鶸田が体現したように、職種転換や配置替えをしなくてもブレイクスルーのきっかけは意外なところに眠っているかもしれない。働く本人にとってはもちろん、マネジメント側においてもいま一度見直しておきたい視点ではないだろうか。

またこの展開が暗に示した、社内評価はさておき「有能っぽく“見える”人」の社外ウケが抜群にいいという結果は、なかなか皮肉である。実際のビジネスシーンにおいても、ハッタリを含めた振る舞いが相手の心象を左右することは、確かに紛れもない事実だろう。

根回しと調整力が物を言う、組織のシビアな現実

また「無能の鷹」では、社内政治を制する者が評価を制する、会社組織のシビアな一面もコミカルに描いている。例えば、営業部のベテラン社員・鳩山樹(井浦新)と、中堅社員・雉谷耕太(工藤阿須加)は対照的ないい例だ。

鳩山は、鷹野の指導係を担当する入社23年目の古株で、絵に描いたようなお人好し。PC音痴の鷹野に対してダブルクリックのやり方から懇切丁寧に教え、ワガママな部長の呼び出しに付き合い、家に帰ったあとは悩んでいる部下からの長電話に応じ……その不憫な世話焼きっぷりは、視聴者の涙を誘う。

そのため妻からは「“都合のいい人”になっちゃってない?」と心配されることも。ストレスフルなケア労働を引き受けているうちにもはや出世コースからは外れてしまったが、気にせず苦労を買って出る人格者である。

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