トランプ外交政策が「やりたい放題になる」根拠 2期目は好き放題にできる環境が整う
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 18時0分
トランプのもう1つの関心の対象は、北朝鮮の独裁者、金正恩かもしれない。トランプは金との”温かい関係”について語り続け、金と和平協定を結ぶ機会を逃したことを嘆いている。
その協定はハノイでの第2回首脳会談でほぼ合意に至ったが、金の要求が大きすぎることと、当時の安倍晋三首相の介入に支えられたトランプ政権内の反対により頓挫した。
が、新政権内にはそのような抵抗はないだろう。石破茂首相はトランプとそのような緊密な関係を持っておらず、また築くこともできそうにない。北朝鮮の核能力と日本に到達可能なミサイルシステムを封じ込める協定への最も深刻な障害は、金正恩自身から来るかもしれない。
トランプは金正恩が両手を広げて待っていると主張するかもしれないが、北朝鮮はその後ロシアと緊密な軍事同盟を結び、ウクライナ戦線に1万2000人の兵士を派遣している。
北朝鮮との交渉はトランプとプーチンの”抱擁”に続くものとなる可能性が高いが、その場合でも金正恩は新たな権力を利用してトランプにはるかに大きな見返りを求める可能性が高い。
日本と韓国との関係はどうなるか
しかし、より可能性が高いのは、米韓関係の崩壊、韓国からの防衛費分担金支払いの再交渉の要求、韓国に駐留する約2万8500人のアメリカ軍の撤退開始だ。
「トランプは韓国を同盟国として重視している兆候をまったく示しておらず、むしろ逆に、撤退か、アメリカ軍が中国と直接対決するために方向転換する中、韓国に北朝鮮に対する自国の防衛の責任をより多く負わせることによって、同盟国を再定義しようとしているようだ」とソウルの檀国大学のベンジャミン・エンゲルはNKニュースに語っている。
日本にとって、アメリカでのトランプ再選は、先月の衆議院選挙で自民党が過半数を失い、石破首相が少数派政権を樹立するという異例の課題に直面した直後に起きた。日本をよく知る専門家が私に語ったところによると、「日本における”政治麻痺”が、この新たな極めて危険な状況を乗り切る日本の能力を制限している」という。
石破はすぐにトランプに祝意を表し、当然のことながら、日米関係の基盤としての戦後の安全保障同盟の継続に希望を表明した。しかし、トランプが同盟を弱体化させる道に深く踏み込んだり、中国との望まない対立を強要したりすれば、日本は、新たに権力を握ったアメリカの独裁者を喜ばせながら中国との関係を改善するなど、代替案を探さざるを得なくなるかもしれない。
「日本人は同盟を終わらせるつもりはない」と日本専門家のハリスは言う。「だが、もっと自力で物事を進める方法を学ばなければならないだろう」。
ダニエル・スナイダー:スタンフォード大学講師
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