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5度克服した男性が語る「がん治療が残した障害」 治療には必ずメリットとデメリットがある

東洋経済オンライン / 2024年11月8日 9時40分

入院期間が長ければ長いほど、体力が回復するのには時間がかかります。なかなか自分が思ったようには回復しません。

初期の固形がんで、手術のみの治療で比較的短期間で退院できた場合は、体力面のダメージもそれほど大きくはないかもしれません。しかし、悪性リンパ腫や白血病のような血液がんで、半年を超えるような長期間の入院で、大量化学療法(通常の化学療法よりもはるかに高い用量の抗がん剤を用いて行う治療)や造血幹細胞移植などの強い治療を受けると、体力や内臓へのダメージも大きくなります。

2回目のがんである悪性リンパ腫の治療を終えて退院したとき、自分の脚力だけでは床から立ち上がれなかったことに衝撃を受けました。そこから、家の周りの散歩や、ちょっと遠くの公園までのウォーキングなどのリハビリで、体力を回復するよう努めました。

しかし、思ったようには回復しません。筋力が失われただけでなく、強い抗がん剤治療や移植治療などで肝臓や腎臓など内臓の機能も影響を受けています。体力回復のペースはゆっくりでした。

がんばってご飯を食べても、入院中に10キロ減った体重は全然増えません。体重が増えないと、体力も筋力もつきません。

当時は早く会社に戻りたいという気持ちばかりが先行して焦っていました。でも結局、病気になる前の体力に戻すのは無理だと気づいて、諦めました。それが最終的には会社を売却するという決断につながります。

虎の門病院の先生からは、「焦らなくても、体重は忘れたころに増えてくるから大丈夫」と言われました。今思い返してみるとその通りで、白血病の治療を経て退院して2年ほどすると、ようやく体重が増加傾向になりました。

今現在は、病気になる前(58キロ)と比べて少し少ないくらいの体重(55キロ)を維持できています。

体重はかなり戻りましたが、体力や筋力という面では、元の自分に全然及びません。外出が続くとすぐに疲れて寝込んでしまい、疲れが抜けるには何日もかかります。視覚障害があるため、電車での外出などは駅で通行人にぶつかってしまったり、階段で足を踏み外しそうになったりと注意が必要で、余計に疲れるという面もあると思います。

しかし、今思うのは、必ずしも病気になる前の元の自分に戻る必要はないということです。

今の自分ができる範囲で生活を組み立てればいい

そもそも加齢の影響もあるはずです。焦って元に戻そうと思っても無理があります。

昔の自分を前提に考えるのではなく、今の自分ができる範囲で生活を組み立てればいい。例えば、外出の予定を詰め込みすぎない、電車での通院は妻に付き添ってもらうなど工夫すれば、生活上それほど困ることはありません。

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