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世界ヒットする松本人志「ドキュメンタル」の狙い 吉本・岡本社長がカンヌで示した迷いなき決断

東洋経済オンライン / 2024年11月9日 14時0分

岡本社長に直球で聞くと「何の疑いもなかった」と言い切り、さらに想いを言葉に乗せます。

「松本人志本人の事情はありますが、作品そのものは彼が築き上げ、彼の才能が反映されたもの。それがこうして海外でも愛され、楽しんでいただけていることが純粋に嬉しく、ありがたいことだと思っています」

テレビ局は複雑な気持ち?!

もしかしたら、この状況に最も複雑な想いを感じているのは日本のテレビ局なのかもしれません。これまで海外にバラエティ番組を売り込む日本の企業はテレビ局が中心。番組の海外販売の権利を持つ立場は限られています。参入企業形態のバリエーションがある海外とは違います。

つまり、プレイヤーが増えることで日本のコンテンツに目が向けられ、日本コンテンツ全体の活性化につながるかもしれないと頭では理解しても、ライバルが増えて食い合う現実的なデメリットは拭えません。

ましてや「ドキュメンタル」の場合はテレビ局の企画が元ネタです。「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系)の罰ゲーム企画「笑ってはいけない」が優勝賞金を懸けた勝ち抜きスタイルにアレンジされています。松本人志が番組内で「“笑ってはいけない”がプロレスだとしたら、“ドキュメンタル”は総合格闘技」と例えていることからも派生形であることは明らかです。

経緯としては岡本社長曰く、「Amazonゆえに、世界で通用する企画を考えてもらうよう松本人志にお願いし、“Amazonとバラエティをやるんだったら松本で”と初めから決めていた」そうです。吉本興業としては松本人志に全幅の信頼を寄せていたのです。

また戦略的な部分も見えます。NetflixやAmazonが日本市場に参入した約10年前の当日、「黒船」に例えられるほど多くのテレビ局や制作会社は慎重な動きを見せていましたが、ぐいぐいと攻めていたのが吉本興業でした。岡本社長の言葉からも裏付けられます。

「黒船が来たという状況で、誰も行かなかった時に、ウチだけが野面で行ったんです。どうせなら、一番に行くっていうのがテーマにありました」

岡本社長は断定しませんでしたが、その裏には制作費の削減やむなしのテレビ局の状況が影響した可能性はあります。実際に欧米ではテレビCM収入の減少に歯止めがきかない現実をみて、グローバルプラットフォームの門を叩いた企業が相次ぎました。

Amazonの成功ストーリー

10月21日に開幕した見本市「MIPCOMカンヌ」の会場には、「ドキュメンタル」を象徴する松本人志の顔写真を全面に押し出した吉本興業ブースが出現していました。会場を見渡せば、ハリウッドのスタジオをはじめ、ヨーロッパの強豪や勢いが止まらない韓国など世界中のメディア企業が参加しています。国内の競り合いなど小さなものにも見え、ライバルが無限にあるように思えるなか、吉本興業のセールスチームが地道に歩を進める姿がありました。

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