トランプに学ぶリーダーシップのアピール技術 アメリカ大統領選を制した言語スキルとは
東洋経済オンライン / 2024年11月9日 15時0分
話し手は、実際にはどういう肩書・立場の人であっても、話している間は、その場を仕切るリーダーです。話す目的として説得や交渉がはいるのであれば、なおさら。その役割をまっとうするために取り入れやすいのは、ハリス氏も行った「歩き回る」という行為。
これは、動物のマーキング行動のようなイメージです。犬や猫などの動物が自分の匂いを残すため糞や尿をかけたりしてなわばりを宣言するのがマーキングです。話しながら部屋の中を歩き回ることで、全体を支配しているという印象を与えます。ハリス氏はこれを登場の段階で取り入れたのです。
この方法を私たちが真似るならば、部屋に入ってすぐに自分の席につくのをやめましょう。一番近いドアから入室せず、あえて後方のドアから入ります。そうすると、自然と回り道をして多く歩かなければならない状態をつくることができます。
相手が座ってあなたの入室を待っていた場合、聴衆は自分より目線の高さが上にある人から見降ろされることになります。これにより、聞き手の中に「この人に従わなければ」という上下関係の意識が無意識に芽生えます。マナーでは失礼とされる上から目線を、あえて逆手にとる作戦です。
話し始めるところからではなく、歩き方から練習する
印象形成に関する心理学研究において「初頭効果」は繰り返し見出されています。初頭効果とは、最初の情報が全体の印象に対して大きな影響力を持っていることを示したものです。そのため、人前で話すときに大事なのは第一印象とよくいわれます。最初に好印象を与えることができれば、その後の行動も良い方向に受け止めてもらうことができます。
最初に聞き手が話し手を認識するのは、その姿を見た瞬間です。つまり、登場シーンを制す者がその場を制すのです。
会議であれば席を立って発言するために前に向かう姿、プレゼンであれば舞台袖から中央まで歩く姿、面接などであれば入室して椅子に座るまでの姿などです。
実際に話し始めるより前である点が要注意です。あなたの印象は「歩く姿」からすでに始まっています。
スピーチトレーニングでは、最初の歩き方だけを練習することもよくあります。歩幅や歩数を測り、事前に決めておくのです。ご自身でリハーサルをする場合は、話し始めるところから練習するのではなく、その前の歩き方から練習し歩数の目安を決めておきましょう。
その際のポイントは、当日と同じ状態で行うことです。着用している服や靴(女性ならパンツをはいているかスカートをはいているかなど)によって歩き方が変わるからです。
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