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トランプ氏「ウクライナを見放すのか支援継続か」 次期政権で対立する2グループが浮上

東洋経済オンライン / 2024年11月9日 10時0分

言い換えれば、前者は、ウクライナ紛争をロシアとウクライナとの単なる2国間戦争と限定的に捉えている。戦争を終了させて、トランプ流「取引」外交の成果として誇示しようという政治的思惑が優先されている。

これに対し、後者は現在のウクライナ紛争について、欧州全体の安全保障に関わる国際的紛争として、より深刻に捉えていると言えよう。

さらに最近北朝鮮がロシアの要請を受け、1万人以上の軍を派兵したことでウクライナ紛争が地理的にも欧州を超え、アジアに波及している。こうした新たな展開を受け、このグループが危機感を一層募らせているのは間違いないだろう。

トランプ陣営内で、ロシアへの過度の譲歩に反対する声が浮上した要因はほかにもある。2024年に入り、プーチン政権が中国、北朝鮮、イランとの間で反西側枢軸国連合の構築を進めていることだ。

ウクライナにおけるロシアの軍事的優勢を固定化する取引をすれば、プーチン政権が率いる枢軸国連合を勢いづかせるとの危機感があるとみる。

このグループの主張で興味深いのは、「力による平和」(peace through strength)戦略に言及していることだ。「力による平和」戦略とは、1980年代に当時のレーガン政権がソ連との外交戦略として採用した。

ソ連に軍事的圧力を掛けたことで、ゴルバチョフ政権をして、軍拡競争を断念させ、冷戦終結に導いたとして評価されている。つまり、プーチン政権に対しては今や、レーガン政権当時のような圧力外交が必要との考えだ。

レーガン政権並みの圧力外交?

トランプ氏がどちらのグループの主張を採用するのか。執筆時点で不明だが、近く発表されるとみられる国務長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官などの安保関連人事で、方向性が見えてくる可能性もある。

一方で興味深いのは、ウクライナ側もこの「力による平和」を対アメリカ外交のキーワードにし始めていることだ。トランプ氏の再選決定直後、ゼレンスキー氏は電話で祝意を伝えた。これに合わせて、ゼレンスキー氏は共和党が「力による平和」路線を堅持していると評価して見せたのだ。

なぜゼレンスキー氏がこの時期に「力による平和」外交を強調し始めたのか。この背景には、ゼレンスキー政権がトランプ氏再登板の可能性をにらんで、実は1年前から始めた水面下の対アメリカ外交工作がある。

「バイデン以外なら誰でも良い」(anyone but Biden)。これが、この外交工作を始めたゼレンスキー政権の合言葉だった。ゼレンスキー政権としては、ロシアとのエスカレーションを恐れて、ウクライナからの武器供与の要請に対し、つねに及び腰で小出しにしてきたバイデン政権には失望していた。

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