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花は盛りと咲くけれど…故人思う人々の胸の内 「源氏物語」を角田光代の現代訳で読む・柏木⑩

東洋経済オンライン / 2024年11月10日 16時0分

夕暮れの雲は鈍色(にびいろ)に霞んでいる。花の散ってしまった枝々を、大臣は今日はじめて目に留める。先ほどの畳紙に、

木(こ)の下(した)の雫(しづく)に濡れてさかさまに霞(かすみ)の衣(ころも)着たる春かな
(子に先立たれた悲しみの涙に濡れて、逆さまに、親のほうが喪服を着ている春となってしまった)

大将の君、

亡き人も思はざりけむうち捨てて夕べの霞君着たれとは
(亡くなった人も思いも寄らなかったことでしょう、あなたさまを残して、喪服を着せることとなるとは)

弟である右大弁の君、

うらめしや霞の衣(ころも)誰(たれ)着よと春よりさきに花の散りけむ
(恨めしいことです。だれに喪服を着せようと思って、春が逝(ゆ)くよりも先に花は散ってしまったのでしょう)

督の君の法要は、世間に例のないほど盛大に執り行う。督の君の異母妹である、大将の妻(雲居雁)はもちろんのこと、大将自身も誦経なども格別に心をこめて、深い配慮のもとに行う。

次の話を読む:11月17日14時配信予定

*小見出しなどはWeb掲載のために加えたものです

角田 光代:小説家

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