中国金属大手、南米のリチウム開発から突如撤退 青山控股集団、新エネルギー事業の前途に暗雲
東洋経済オンライン / 2024年11月11日 18時0分
中国のステンレス鋼大手の青山控股集団が、南米アルゼンチンのリチウム塩湖の資源開発プロジェクトから撤退することがわかった。10月23日、プロジェクトのパートナーであるフランスの鉱山会社エラメットが、青山集団が保有する49.9%の開発権益を6億9900万ドル(約1066億円)の現金で買い取ると発表した。
【写真】青山控股集団がインドネシアのスラウェシ島に建設したステンレス鋼とニッケル鉄合金の生産拠点
エラメットは、アルゼンチン北西部のサルタ州でリチウム塩湖の資源開発を手がけている。青山集団は2021年、3億7500万ドル(約572億円)を投じて現地開発会社の発行済み株式の49.9%をエラメットから取得。これは青山集団にとって初のリチウム採掘事業への参入だった。
フランス企業が買い戻し
その後、青山集団はエラメットと共同で現地にリチウム抽出プラントを建設し、2024年7月から(リチウムイオン電池の主原料である)炭酸リチウムの生産を開始した。その追加投資を含む青山集団の累積投資額は6億1900万ドル(約944億円)。それに対して、エラメットは約13%のプレミアムを乗せて権益を買い戻す格好だ。
エラメットの開示資料によれば、開発中のリチウム塩湖の総資源量は炭酸リチウム換算で約1500万トンに上る。リチウム抽出プラントは第1期の完成時点で年間2万4000トンの生産能力を持ち、将来は同7万5000トンへの拡大を目指している。
このプロジェクトからの撤退について、青山集団は理由を明らかにしていない。一方、エラメットは今回の取引が円満なものだと示唆すると同時に、青山集団とインドネシアで進めているニッケル鉱山の共同開発に引き続き注力すると強調した。
中国の業界関係者にとって、青山集団の唐突な撤退は驚きだった。アルゼンチンのリチウム塩湖の開発は、同社の(伝統的な金属資源開発・精錬事業から)新エネルギー分野へのシフトを象徴するプロジェクトであり、しかも本格生産の段階に入ったばかりだったからだ。
それだけではない。青山集団は2023年10月、南米チリにリン酸鉄系リチウムイオン電池の正極材の工場を建設すると発表。総額2億3300万ドル(約355億円)を投じて、年間生産能力12万トンの生産ラインを2025年5月に稼働させる計画だった。
アルゼンチンのリチウム抽出プラントは、チリの正極材工場への原材料供給を予定していた。業界関係者の間には、今回の権益売却は青山集団の新エネルギー関連事業にとってマイナスとの見方がある。
資金繰り悪化の臆測も
青山集団の性急な動きについて、市場からは資金繰りの悪化が原因ではないかと懸念する声も漏れ聞こえる。
同社はニッケル資源が豊富なインドネシアにいち早く進出し、ステンレス鋼および(電池材料の)ニッケル鉄合金の巨大な生産拠点を築いた。ところが今、青山集団は中国の不動産不況によるステンレス鋼の需要低迷と、(リチウムやニッケルなどの)新エネルギー関連金属の相場急落というダブルパンチに見舞われている。
中国の金属業界内で、青山集団はコスト管理能力の優秀さで知られており、相対的な競争力は高い。だがそれでも、インドネシアのニッケル鉄合金事業は生産設備の一部が2023年末までに採算ラインを割り込んだもようだ。
青山集団は非上場企業であり、財務情報を外部に開示していない。それだけに、同社の資金繰りの実態をつかむのは容易ではない。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は10月24日
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