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「幸せになってほしい」は"有害な言葉"である理由 人生が「なぜか満たされない」ものになる本当の訳

東洋経済オンライン / 2024年11月11日 8時30分

これについて調べた優れた研究がいくつかあります。その1つは、途方もなくラッキーな経験と、逆に命が縮まるような経験の後で、幸福感がどうなるかを調べました。前者の例では、宝くじに当たった1年後、当選者たちの人生に対する満足度は、当選前に比べてわずかに高いだけでした。実質的に不幸になり、当選しなければよかったと言う人もいました。一方、後者の例として、大きな事故に遭って半身不随や四肢麻痺になった人たちは、自分の幸福度は同年代の人々よりやや低いだけだ、と報告しています。

これは幸福にまつわるもう1つの秘密を明かしています。それは、好ましい出来事、好ましくない出来事、あるいは人生が変わるような出来事がもたらす感情を、私たちは過大評価しがちだということです。

これは「インパクトバイアス」と呼ばれます。最高の気分になれそうな状況は確かに幸福感を急上昇させますが、それは私たちが期待するほどの大きさでも期間でもありません。同様に、私たちが恐れる状況も、実際には思うほど不幸ではないようです。さて、お伝えしたい幸福の秘密は、もう1つあります。

私たちは常に幸せでいられるようにはできていない

1分間、考えてみましょう。基本的に、私たちは常に幸せでいるようにはできていないということについて。

私たちの目的は、幸せになることではないのでしょうか? そうでないとしたら、生きることの目的は何なのでしょう。答えは実に単純です。進化的に見れば、私たちは、子孫を残し、人類を存続させるために生きているのです。この考え方は一見、敗北主義のように思えるかもしれませんが、実際には、私たちを解放してくれます。なぜなら、常に幸せでいたいという願望を手放せば、地に足をつけて、今を生きられるようになるからです。そうすれば、快楽の踏み車のような幸せと不幸せの連続ではなく、常に平穏で深い満足を得られる人生を生きることができるでしょう。

世界のウェルネス業界は、モチベーション思考、幸せになるためのあらゆる教室や製品、数えきれないほどのウェルネスの実践方法を売り物にして、現在では、数兆億ドル規模に成長しています。兆というのは100万の100万倍です。私たちが苦労して稼いだお金を、ウェルネス業界は美辞麗句を並べて吸い上げているのです。

ある意味、その業界は、道徳的な仮面をかぶった美容業界のようなもので、美容業界と同じ心理トリックを使って私たちを魅了します。その中心となる幻想は、私たちはいついかなるときも幸せであるべきだ、というものです。

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