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玉木氏「不倫報道」も無傷?国民民主が大躍進の訳 政党優先より政策優先、卓越したバランス感覚だ

東洋経済オンライン / 2024年11月11日 18時40分

ムフのいうポピュリズムは、社会において「自由と平等の原理」が徹底されていないことを問題視するもので、「立憲主義的な自由-民主主義的枠組みの内部で、新しいヘゲモニー秩序を打ち立てることを求める」ものだからだ(『左派ポピュリズムのために』山本圭・塩田潤訳、明石書店』)。

一部の経済人や政治家たちが唱道する経済政策によって社会が破壊され、多くの国民が疲弊し、それでも何も変わらない危機的な状況、民意=主権者の声が政治に反映されているとは言い難い現状に対して、もう一度「人民による支配」という民主制の根本に「原点回帰」しようと試みる運動といえる。このようなポピュリズムは「民衆こそが正義でエリートは敵」とする「反エリート主義」とは似て非なるものである。

ポピュリズムが必ずしも悪いわけではない

前出の水島は、ポピュリズムの比較研究において、ポピュリズム政党の進出が民主主義に明らかな悪影響を与えるとはいえず、特にポピュリズム政党が野党にとどまる場合は、どちらかといえばプラスの影響を与えるとする議論を紹介している。

「ポピュリズム政党が進出することは既成政党に強い危機感を与えるが、それは既成政党に改革を促す効果を持つ。ポピュリズム政党の批判の矢面に立たされた既成政党は、その批判をかわし、支持層のポピュリズム政党への流出を防ぐため、自らの改革を迫られるからである。その改革は、党の政策内容から、党自体のあり方にまで及ぶ」という(前掲書)。

そして、「既成政党はそれまで軽視してきた――それゆえにポピュリズム政党から無策を批判された――政策を正面から取り上げるとともに、旧態依然とした党のイメージの払拭に務めざるをえない」ことになるからだと説明している。

まさに、今回の国民民主党がキャスティングボートを握ることによって急浮上した「103万円の壁」問題そのものである。11月8日の会見で国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、「103万円の壁」について、「非常に多くの若者がこれをやってほしい」と悲鳴にも似た声があったことを話している。

政治学者の吉田徹は、「ポピュリズムはなるべく『人々』とダイレクトな結びつきを作ろうとする」「リーダーと国民の直接的な対話や結びつきを重視するからこそ、ポピュリスト政治家はメディアを手段として最重要視する」(『ポピュリズムを考える 民主主義への再入門』NHKブックス)と指摘したように、とりわけ後者のポピュリズムはSNSなどのメディアを活用して人々と直接つながろうとする。

だが、票数を稼ぐためのコミュニケーションではなく、国民のニーズを把握するためのコミュニケーションであることがうかがえ、この点においても国民民主党のバランス感覚は興味深い。

このように状況を分析すると、日本のポピュリズムも新しい段階を迎えたといえるかもしれない。

特に2019年以降、新興政党を危惧する声が聞かれるが、実のところ少数派の不安や不満が国政政党という正式な回路を持つことによって、かえって過激化や地下活動を抑止する安全弁として機能する面がある。これは馬鹿にならない。

ポピュリズムの効能もまったく同じであり、結局のところ、わたしたち一人ひとりの有権者が実地で学習していくしかないのだ。

真鍋 厚:評論家、著述家

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