ドイツの空飛ぶクルマ開発企業「リリウム」が破産 中国・深圳で商用運航目指すも、事業資金が枯渇
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 18時0分
「空飛ぶクルマ」の開発を手がけるドイツのスタートアップ企業「リリウム」は10月24日、ドイツの裁判所に破産手続きを申請すると発表した。資金繰りが悪化していた同社は、ドイツの金融機関から1億ユーロ(約164億円)の融資獲得を目指していた交渉が行き詰まり、事業継続のメドが立たなくなった。
リリウムから融資を打診されたドイツ復興金融公庫は、その条件としてドイツ連邦政府および(本社所在地の)バイエルン州政府による保証を求めた。しかし最終的に、連邦政府(の所管部門)が保証に同意しなかった。
筆頭株主はテンセント
仮に融資が実現した場合、リリウムはそれを(経営破綻を防ぐための)緊急の資金需要に回す予定だった。その望みが絶たれたことは、経営陣に破産申請を決断させる最後の一押しになった。
リリウムはアメリカのナスダックに株式を上場しており、破産申請の発表とともに株価は暴落。10月24日の終値は0.21ドル(約32円)と、前日終値(0.54ドル=約82円)からの下げ幅が6割を超えた。
同社はドイツ企業だが、その事業は中国との関わりが深い。リリウムの実質的な筆頭株主は中国のネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)であり、発行済み株式の約22%を保有している。
中国では近年、各地の地方政府が空飛ぶクルマを利用した地域レベルの空中交通サービスの導入や、関連産業の誘致・振興を模索している。そんな中、リリウムは2023年6月、広東省深圳市宝安区にアジア地域の統括会社を設立すると発表し、同区政府と覚書を交わした。
さらに同社は、深圳を本拠に広東省・香港・マカオを結ぶヘリコプター航路を運営している東部通用航空とも提携。リリウムの空飛ぶクルマが中国の航空安全当局の耐空証明(訳注:航空機の安全性について国の基準に適合しているという公的な証明)を取得することを前提に、東部通用航空が本格的な商用運航を手がける計画を発表していた。
独特の設計が敗因か
空飛ぶクルマの業界関係者の間には、リリウムの資金枯渇は同社が破産に至った表面上の理由に過ぎないという見方がある。事業が行き詰まった真の要因は、リリウムが選択した技術的アプローチが冒険的過ぎ、商用化の見通しが立たなかったことにあるというのだ。
リリウムが開発していた「リリウム・ジェット」は、機体前後の翼の上に小型の電動ダクテッドファンを30台も並べた独特の設計を採用。同社によれば、乗客6人と操縦士1人が搭乗可能で、航続距離は最大155マイル(約249キロメートル)に達するとしていた。
だが、これほど多数の電動ファンを稼働させると、離着陸時の電力消費量が大きくなる。そのため業界内では、既存の電池技術を利用する限り、リリウムが主張する航続距離は達成不能との分析が主流だったという。
(財新記者:方祖望)
※原文の配信は10月25日
財新 Biz&Tech
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
豊田章男会長は「かっこいい!」と叫んだ…トヨタ悲願の「空飛ぶタクシー」実現を叶えた、亡き祖父との"約束"
プレジデントオンライン / 2024年11月11日 13時15分
-
億航智能、中国民用航空飛行学院と空飛ぶクルマの運航関連人材を育成(中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月6日 14時0分
-
独「空飛ぶタクシー」開発新興、資金難で破産申請へ
ロイター / 2024年11月5日 8時27分
-
世界初の「空飛ぶクルマ」工場が広州で着工、年間生産能力1万台―中国
Record China / 2024年11月3日 7時0分
-
「祥雲」AS700が12機受注、中国の有人飛行船が商用運航開始へ
Record China / 2024年10月16日 19時30分
ランキング
-
1船井破産決定に即時抗告 原田氏、再生可能と主張
共同通信 / 2024年11月12日 22時20分
-
2“103万円の壁”見直しに「7兆円は相当厳しい」経済同友会・新浪氏…税収減で指摘
日テレNEWS NNN / 2024年11月12日 18時54分
-
3四国停電、関電と連携ミスが原因 供給力急減し、一部で送電停止
共同通信 / 2024年11月12日 17時27分
-
4物価高のなか… 無料クーポン コンビニ各社で広がるワケ、新商品の販促効果も【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月12日 21時11分
-
5国際課税改革が漂流危機 トランプ氏の大統領選勝利で
共同通信 / 2024年11月12日 19時43分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください