自己放任が招いた「孤独死」この夏の過酷な現実 "死の現場"が映し出す社会のいびつな側面
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 7時20分
孤独死や陰謀論が社会問題化している。その背後にあるのが、日本社会で深刻化する個人の孤立だ。『週刊東洋経済』11月16日号の第1特集は「超・孤独社会」だ。身元保証ビジネスや熟年離婚、反ワク団体など、孤独が生み出す諸問題について、実例を交えながら掘り下げていく。
防護服を頭まですっぽりと身にまとい、防毒マスクを着ける。そんな厳重な装いで特殊清掃業者と共にアパートや戸建て住宅に突入する。大抵カーテンか雨戸が下りているので部屋の中は真っ暗だ。コツコツとぶつかってくるのは無数のハエで、マスクの隙間から入ってくる死臭と、異常な熱気のせいで、すさまじい汗が噴き出す──。
照明がつくと、そこには人がたに広がった赤茶色の体液、そして蛆(うじ)やゴキブリといった大量の虫たちが待ち受けている。
こういった特殊清掃の現場の大半が孤独死だ。この過酷な現場を追い続けて10年近くになる。
まさに孤独死バブル
今年の夏は暑かった──。そのため知り合いの多くの特殊清掃業者が、引っ張りだこだった。彼らの多忙さは、この夏に多くの人命が奪われたことを物語っている。9月に入ってからも、うだるような猛暑が続いた今年の夏は、まさに孤独死バブルだった。
キャリア20年近くの特殊清掃業者は、こう振り返る。
「この時期に多いのは、熱中症による孤独死です。今年は物価高や光熱費の高騰が影響しているのでしょう。電気代を節約するためか、エアコンをつけていない、エアコンが壊れていても修理していない、あるいはそもそもエアコンがない部屋が目立ちました。ゴミがうずたかく積まれている屋敷や、逆に生活をギリギリまで切り詰めた簡素な物件も。生前に周囲との交流がなく、死後3カ月で発見された物件もありました」
孤独死の7割を占めるのが、セルフネグレクトだ。セルフネグレクトとは自己放任ともいい、自分自身のケアができなくなることを指す。ゴミ屋敷化や、医療の拒否、自分で世話し切れない数のペットの多頭飼いなどだ。それは、いわば緩やかな「自死」で、自分自身の心と体を緩やかに殺していく行為でもある。
夏の暑さは、そんなセルフネグレクトに陥った人たちに、容赦なく追い打ちをかける。例えばゴミ屋敷の中で寝起きしているとゴミが熱を持つため、熱中症のリスクがぐんと高まる。
社会的孤立が背景
私は、これまで数え切れないほどの孤独死現場に立ち会ったが、幾度となくやるせない気持ちに襲われた。それは、故人の苦悩を感じることが多かったからだ。
この記事に関連するニュース
-
生活保護を受給していた78歳の父が“腐敗した状態”で発見。納骨までにかかる「驚きの金額」と、実娘が知った福祉葬の実態
日刊SPA! / 2024年11月13日 8時53分
-
散乱した部屋に亡き妻の骨壺残し… 街にあふれる「孤独死予備軍」 「薄縁」時代㊥
産経ニュース / 2024年11月10日 12時0分
-
「突然死の義父」が隠した"孤独すぎるゴミ屋敷" あまりに突然の死…残された家族が見た驚きの光景
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 12時0分
-
清掃業者が気づいた「女性のゴミ屋敷」“ならでは”の特徴。「だらしない」だけで済まされない事情とは
日刊SPA! / 2024年10月28日 8時53分
-
Spotify公式プレイリストに ”業界初” 選出!遺品整理/特殊清掃人が語る怖くて奇妙なエピソード
PR TIMES / 2024年10月17日 19時15分
ランキング
-
1アダルトサイト誘導を謝罪 米玩具大手マテル、箱に誤記載
共同通信 / 2024年11月13日 7時16分
-
2「虫混入報告」チロルチョコとシャトレーゼの明暗 企業ブランドを守るために企業ができること
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 9時40分
-
3オフィス内に「公園の遊具」? コクヨが狙うは「出社回帰」の波
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 6時40分
-
4管理職を「続けたくない」理由 2位「給与面でのメリットを感じない」、1位は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 7時0分
-
5トラブル時の「新幹線ホテル」実際に泊まってみた 車内で何人が寝ているのか、快適に眠れるか
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 6時30分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください