独身の彼女が韓国で「2人の養子」を迎えたなぜ 1人ではなく、2人迎えようと思った根本理由
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 16時0分
「非婚(=結婚しない生き方)」を選んだ韓国の編集者ペク・ジソンさんは、2人の子どもと養子縁組をして家族になりました。独身のジソンさんが1人ではなく、2人迎えようと思った理由とは。ジソンさん著『結婚も出産もせず親になりました』より紹介します。
わたしが養子を2人迎えた理由
養子を迎えるなら2人にしようと最初から決めていた。わたしが両親からもらったいちばん大きなプレゼントはきょうだいだから、自分もわが子に姉妹というプレゼントを贈りたかったのだ。
わたしの両親は不仲で、経済的にも苦しかった。わたしたちきょうだいは運悪く不幸な家庭に生まれてきた自分たちをお互いに気遣い、その力で子ども時代を耐え抜いた。苦労しているのは自分だけではなく、きょうだいも同じだから、決して不平不満を言ったり、グレたりするわけにはいかなかった。わたしたちは、心はボロボロでも表向きは優等生として学生時代を乗り切った。
苦しんでいる者同士の結びつきは強力だ。手と手を取り合っている分、誰かが倒れると他のみんなへの負担が大きくなる。だから、つらくても絶対にへこたれるわけにはいかない。自分の味方にまで苦労をかけるわけにはいかないから。
わたしの娘たちも今後の人生で偏見にさらされたり、さまざまな困難を経験したりすることがあるだろう。そんなとき、長女は次女を、次女は長女を見て、自分を客観視できると思う。
自分のこととなると答えが見つかりにくいけれど、悩んでいる姉妹にどんなアドバイスをするかを考えて実践すれば、無用な自己憐憫や迷いから抜け出せるはずだ。自分と同じ悩みと苦しみを持つ姉妹がお互いを支える頑丈な柱になる。
きょうだいの理想的な年の差とは?
姉が産んだ子どもたちを見ながら、きょうだいの年齢差は3歳がいちばん理想的だなと思っていた。1〜2歳差はケンカが多くなりがちだし、2人の赤ちゃんを同時に育てるのも大変だ。年齢が近いと、きょうだい間の競争心も強くなる。
4歳以上離れると共通点が減って、一緒に遊ぶのが難しくなる。その点、3歳違いなら成長スピードが違うから親の負担も少なく、きょうだい同士で共有できることも多い。
そういうわけで、わたしは長女を養子に迎えてから3年後の2013年に次女を引き取った。当時3歳の長女は、保育園での集団生活になじんで独立心を身につけていく段階だったから、妹の面倒を見て遊んであげる役割をしっかりこなしてくれた。
養子縁組機関で手続きを進める間、次女と面会するときはいつも長女を連れていった。長女は自分に妹ができることを知り、自分も妹と同じように養子縁組の手続きを経てわが家にやってきたことを自然に受け入れた。
長女のときは書類だけを見て養子縁組を決め、顔合わせの数日後に引き取ることができたので、「うちの子になったんだ」という実感と喜びが最初から強かった。ところが、次女のときは顔合わせ後も複雑な手続きが残っていて、この子を娘として迎えられるという確信が持てなかった。
養子縁組機関を訪問すると、次女はベビーカーでよだれをたらしながら眠っていたり、わたしが里親や社会福祉士と話している間、テーブルの上をはいまわったりしていた。何事にもポジティブで明るい長女は、赤ちゃんを不思議そうに見つめていた。
ときどき、養子縁組機関内の保育所で一緒に過ごすこともあった。まだ〝うちの子〞として迎えられるかどうかはっきりしていなかったし、次女の面倒を見ていた里親さんも同席していたので、気楽に接することはできなかった。面倒な手続きを早く終えて、養子縁組の許可が下りることだけを願っていた。
いよいよ次女をわが家に迎えたときは生後10カ月を超えていた。環境ががらりと変わって不安で混乱している次女にとって、3歳年上のお姉ちゃんは頼もしい存在だったことだろう。子どもを観察していると、自分と同じ〝小さな子〞に親しみを抱いて関心を示すということがわかる。次女が新しい世界に適応するとき、お姉ちゃんがいつもそばにいてくれて本当によかったと思う。
次女の養子縁組のほうが大変だった
長女を養子に迎えたときも手続きが複雑だなと感じたけれど、次女との養子縁組はそれとは比べものにならないほど大変だった。提出書類や養子縁組機関での家族面談、養親研修の内容は前回とほぼ同じだったが、2012年に施行された養子縁組特例法改正により、養子縁組には実親による出生届の提出と家庭裁判所の許可が必要になった。
そのほかに変わった点は、家庭裁判所と提携する心理機関で心理検査を受けたこと。裁判所から自宅に調査員が派遣され、家庭環境のチェックも行われた。お年を召した調査官がやってきたときは、定年退職した裁判所職員の天下りかもしれないと思ってしまったけれど、悪印象を持たれないように必死で彼のとんちんかんなおしゃべりに調子を合わせた。
今回は知人の推薦状だけでなく、推薦者の印鑑証明書も必要だった。家族でもない相手に、不動産購入にも使われる印鑑証明書を頼むのは気が引けたけれど、以前の職場の同僚2人がまた協力してくれた。
難しい頼みごとを聞いてくれた2人に感謝する一方で、どうにも腑に落ちなかった。政府機関が個人情報を把握している韓国では、身元を確認する方法なんて他にいくらでもあるだろうに。
※
後編:独身で養子迎えた彼女が「親として」心がけたこと
(翻訳:藤田麗子)
ペク・ジソン:編集者
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