巨額還元でも抜け出せない東洋証券の「株主対応」 新中計の中身は、なりふり構わぬ収益改善策
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 7時30分
物言う株主(アクティビスト)に標的にされた証券会社が「巨額還元」に踏み切る。
【写真】なりふり構わぬ収益改善策を発表した東洋証券の小川憲洋社長
広島県や山口県に地盤を持つ東洋証券は10月30日、2028年3月までの中期経営計画を発表した。2024年3月期に3.5%だったROE(自己資本利益率)を8%以上に高め、2027年3月期までの3年間、毎年50円の配当を支払う(2024年3月期は10円配)。
東洋証券をめぐっては2024年6月の株主総会で、一部の株主が桑原理哲社長(当時)らの取締役選任議案に反対する姿勢を示していた。選任の見通しが立たなかったことから、総会当日に桑原氏の選任案を撤回。代わって株主総会後に就任したのが、現在の小川憲洋社長だ。小川社長の取締役賛成率も51.47%だった。
株主提案の取締役候補は全員否決され、広島市内に持つ不動産の売却を求める提案も可決には至らなかった。しかし取締役全員がギリギリの賛成率で、東洋証券の経営が薄氷の上にあることが印象づけられた。
危機感背景に「新中計」を策定
株主総会の結果に危機感を募らせた経営陣は、直後から中計の見直しに着手した。
そして10月30日に発表したのが新中計「お客さまの信頼がすべて」だ。従来の2026年3月期を最終年度とした中計は撤回した。業績目標としてROEのほかに、預かり資産残高1.5兆円、株式投信残高5000億円を掲げる。
2024年3月末時点で預かり資産残高は1.32兆円、株式投信残高は3280億円あり、残高が増えるほど安定収益を見込める投信関連の預かり資産を増やす計画だ。
新NISAの開始など資産運用立国に向けた施策を背景とする株高で、預かり資産は増加傾向にある。東洋証券でも2024年3月期の1年間で2700億円増えており、預かり資産残高の目標は決して不可能ではない。
10月30日に会見した小川社長は「現場と対話して作った目標。投信残高が積み上がることが重要で、5000億円は大前提として達成したい」と語った。
ただし預かり資産残高の目標をクリアできたからといって、万事うまくいくわけではない。問題はこうした施策を積み上げたところで、目標とするROE8%に届かないことだ。
確かに投信やファンドラップの残高が増えれば、信託報酬などが安定的に入るようになる。しかし劇的に収益が増えるわけではない。ROE8%を達成するためには、2024年3月期に13億円だった純利益を倍以上に増やす必要がある。
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