マスク氏「3割歳出削減」の大ナタと八方美人の日本 アメリカとは異なる様相で「民主主義が揺らぐ」
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 7時50分
11月5日のアメリカ大統領選挙で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が2度目の当選を確実にした。焦点は早くも、2025年1月から始まる第2次トランプ政権の閣僚や政権運営スタンスに移っている。
その中で、トランプ氏に巨額の政治献金をしたイーロン・マスク氏の処遇にも注目が集まっている。
トランプ次期大統領は大統領選挙中に、政府の組織や予算を効率化するために新組織「政府効率化省」(Department of Government Efficiency:DOGE)を立ち上げ、そのトップの「コスト削減担当長官」にマスク氏を任命すると述べている。
これに呼応して、マスク氏は、連邦予算から少なくとも2兆ドル(約307兆円)を削減できると述べている。2024年度の連邦予算の規模は6兆9409億ドルであり、2兆ドルはその支出総額の約30%に当たる。
加えて、マスク氏は大統領選挙期間中に、「政府の支離滅裂な支出が国を破産に追い込んでいる」とも述べている。
連邦予算の支出総額の約30%という規模で歳出削減などできないのではないか、との見方もある。
元来「小さな政府」志向の共和党
しかし、共和党は、連邦上院の過半数を確保し、連邦下院も過半数に迫る議席を確保している。そうなると、行政府と立法府の支配が異なる政党によって分割されるという「分割政府」状態ではなくなり、大統領の意向が連邦議会でも通りやすい状況にはなるだろう。
だから、本気で歳出削減を企画すれば、政治的に実現する可能性はある。
元来、アメリカでは、民主党が「大きな政府」志向であるのに対して、共和党は「小さな政府」志向であるといわれている。その観点から言えば、共和党が歳出削減を言い出すことは、何ら不思議なことではない。
トランプ次期大統領は、歳出削減とともに減税も主張しており、その傾向に従っているといってよい。
第1次トランプ政権(2017~2020年)の時期はどうだったか。
連邦予算の歳出は、大規模な削減はしていないが、対GDP比で約20%(コロナ禍を除く)を維持しており、歳出を拡大することはしていなかった。コロナ前だと、4兆ドル強であった。
他方、連邦法人税率の引き下げを含む減税を行ったため、連邦政府の財政赤字は、その前のオバマ政権(2009~2016年)の後半よりも拡大した。
コロナ禍で後を襲ったバイデン政権(2021~2024年)では、当初はコロナ対策で多くの歳出を要したが、コロナ禍が終わっても依然として歳出規模は対GDP比で24%を超えている。
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