EV大国の中国で「地下駐車場」安全基準強化の背景 韓国の火災がきっかけ、深圳市などが独自規制
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 17時0分
中国各地の都市で、EV(電気自動車)の入庫を前提にした地下駐車場の安全基準を強化する動きが相次いでいる。車載電池の自然発火による火災のリスクを抑えつつ、仮に発火しても被害を最小限にとどめるのが狙いだ。
【写真】中国の集合住宅の敷地内に設置された共用の充電ステーション
その大きなきっかけは、韓国の仁川市で8月1日に起きた火災事故だった。地下駐車場に駐車されていた1台のEVが自然発火し、周囲の自動車に引火して140台以上が全焼または一部焼損、有毒な煙を吸った住民が病院に搬送される事態になった。
韓国の事故は中国でも大きく報じられ、一部の病院、ホテル、公共施設などが(火災リスクの回避を理由に)地下駐車場へのEV入庫を断るケースも出てきた。だが、このような一律の禁止対応はEVユーザーの利便性を損ねるだけでなく、EVの普及を後押ししてきた中国政府の政策とも矛盾しかねない。
電池の自然発火は予測困難
そんな中、複数の地方政府が国家レベルの安全基準の策定に先駆け、独自の対策に乗り出している。
例えば江蘇省常州市は、10月25日から「EV地下充電施設の建設および消防・安全管理の強化に関する規定」の試験運用を開始。広東省深圳市は、11月1日から「新エネルギー車の地下駐車スペースの消防安全管理ガイドライン」の適用を始める予定だ。
「EVの自然発火のメカニズムはエンジン車とは大きく異なる。動力源であるリチウムイオン電池の自然発火は偶発性が高く、予測困難だ。また、いったん発火すると消火するのが難しく、発生ガスの有毒性も高い」
深圳市の消防当局と研究機関が共同でまとめたガイドラインの解説文では、EVの自然発火事故の特徴やリスクをそう指摘している。
そのため、深圳市を含む各都市の規制はいずれも、地下駐車場内におけるEVの駐車スペースおよび充電スペースを独立した専用区画にするよう求めている。専用区画は原則として地下1階または地下2階に設けなければならず、一連の徹底した防火対策が義務づけられる。
例えば深圳市のガイドラインは、地下駐車場のEV専用区画に2時間以上の耐火性能を持つ防火隔壁の設置を定めた。さらに、区画の全域をカバーする自動警報装置およびビデオ監視システムの設置も必須だ。
EV充電装置の出力を制限
充電スペースに関しては、地下駐車場に設置できる充電装置の最高出力を制限する。高出力の急速充電装置はEVの車両側と通信することで過充電や異常発熱などを防いでいるが、機器の相性によっては(制御がうまく機能せず)発火リスクが高まる恐れがあるからだ。
深圳市のガイドラインでは、地下駐車場内に設置できる充電装置を「出力30kW(キロワット)以下の交流低速充電装置」のみとし、急速充電装置の設置を事実上禁じた。
「これまでの経験から見て、出力が低い交流低速充電器なら(発火事故の)問題は生じない」
集合住宅向けの共用充電ステーションなどの設置・運営を手がける帕哥智能科技の項軍龍・総経理(社長に相当)は、財新記者の取材に対してそうコメントした。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月26日
財新 Biz&Tech
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