「教員はサービス業?」学校の先生達が抱える苦悩 学校の先生は何で勝負する?忘れられない疑問
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 16時0分
「じゃあ学校の先生たちはいったい何で勝負するんですか?」
22年前、野球部の外部指導者の方に言われたその言葉を、私は今でも鮮明に覚えている。
当時の私は教員1年目。バリバリの高校球児であった外部指導者の方が率いる野球部の顧問を任された。私自身も野球経験者で野球が大好きだったものの、その方の技術と知識は段違いに優れていた。
私が着任したときには、既に1年分の野球部の大会予定が決まっており、合間の土日には当然のように練習試合が組まれていった。
生徒といることに喜びを感じていたし、最初はそれでもよかった。しかし、プライベートの時間もなく、人に決められた予定に合わせて生活するのが、だんだんとしんどくなっていった。
部活に限らず、教員としての業務があまりにも多岐にわたっていたため、教材研究の時間も、1日1時間取るのがやっとだった。
そんな弱音を彼に漏らしたときに戻ってきたのが、その言葉だった。「じゃあ学校の先生たちはいったい何で勝負するんですか?」。
私は、何も言い返せない自分が嫌だった。野球の専門家であるシニアリーグの野球指導者や、授業を教えることに特化する塾講師の存在が脳裏をよぎり、学校教員の自分は全てが中途半端な気がした。
結局、私は勝負できる環境を自分でつくる他なかった。人としての生徒の成長に深く携わりたいと願った私は、1週間3回の英語の授業ではとうてい足りない、生徒との信頼関係構築の場を部活などの課外活動にも求めた。
生徒の下校時間までは極力生徒と過ごし、一人でできる事務作業は後回しにした。3年目には校長から野球部を一人で任され、あの外部指導者の方からいただいた言葉を思い出しつつ、指導者として成長できるよう精進した。
自分の師匠も見つけ、一から学び直す覚悟を決めた。たくさん叱られ、反省し、それでも師匠の技を盗もうとすればするほど、自分が目の前の子どもたちの「先生」に近づいていくのを感じた。
自分が「生徒」になったことで、初めて「先生」への道が開けた気がした。いつしか、私のそんな姿を見て保護者も団結し、私が頼むことには全面的に協力してくれるようになっていた。
同時に、英語の教材研究にも力を入れた。授業がつまらなければ生徒は耳を貸さなくなるし、生徒との信頼関係は築けない。生徒たちが私の英語の授業を楽しみにしているかどうか、それが自分にとって一つのバロメーターとなった。英語を通して、生徒たちの小さな世界が広がっていくことに魅力を感じた。
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