「年収の壁」引き上げで手取り減るケース多発の訳 パートは年収増で手当て減や社会保険加入が負担に
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 7時40分
国民民主党の主導で、所得税がかかる年収の基準を現在の103万円から178万円へ引き上げる議論が進んでいます。実現すれば7.6兆円の税収減となり、家計の手取りは増えるとも言われています。
しかし現在の案では、減税幅は高所得者ほど大きく、所得額によってはそれほど大きな減税効果は望めません。
また、今回の見直しは「年収の壁」を気にしながらパートやアルバイトなどとして働く人の年収アップを促すと期待されています。しかし、年収が上がれば手当を受けられなくなったり、社会保険に加入したりする影響から、むしろ手取りが下がってしまうケースも多々あるのです。
今回の見直し案と「年収の壁」との関係を整理してみましょう。
現在は年収103万円を超えると所得税がかかる
会社員、パート、アルバイトなど給与収入がある人は、所得税の計算において基礎控除と給与所得控除が適用されます。基礎控除は48万円(本人の所得が所定額までの場合)、給与所得控除は55万円(給与収入が162.5万円まで)のため、合わせて103万円までは所得税がかかりません。
この仕組みによって、所得税の負担を回避するため年収を103万円以下に抑えて働くケースがあるため、「年収103万円の壁」とも呼ばれます。
年収が103万円を超えると、超えた部分に対して所得税がかかります。今回の見直しではこの課税の最低ラインを年収178万円に引き上げることが検討されています。
また、住民税についても現在は給与収入が年100万円を超えると超えた部分に所得割が課税されますが、これも見直される方向のようです。詳細は今後調整される見通しですが、年収178万円までは税がかからないようになるかもしれません。
もしそうなれば、178万円まで給与収入が増えた分は、そのまま手取り収入の増加になりそうに思えます。
しかし、家族の社会保険の扶養に入っている場合には、単純に手取りが増えるとは限りません。手取り収入には、さまざまな年収の壁が影響するためです。
103万円の壁は所得税だけの壁ではない
実は年収103万円の壁は、人によっては所得税負担以外の意味もあります。たとえば、会社員に扶養されている配偶者や子どもなどです。
配偶者手当や家族手当を支給する企業などでは、支給対象となる配偶者や子どもなどの年収基準を103万円以下としているところが少なくありません。このため手当を受け取れるように、配偶者や子どもなどがパート・アルバイトの収入を103万円以下に抑えるケースがあるのです。
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