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現代人がこれほどボードゲームに熱中する深い訳 ゲームマーケット開催直前、改めて魅力に迫る

東洋経済オンライン / 2024年11月15日 15時0分

むしろ「ちょっと難しい?」のように声をかけて教えあったりして、全員が同じように楽しみたいという気持ちが自然に湧きます。結果として、ゲームの上ではむしろ負けてしまったとしても、「みんなでいいプレイができたな」とする満足感の方が勝るからです。

小野 いわば利他心(=他のプレイヤーに楽しんでほしい)が利己心(=自分が満足したい)と矛盾せず、一体の形で自然に発揮されるわけですが、この「自然さ」が大事なんですよね。

リワークデイケアでボードゲームが趣味になった與那覇さんでも、もし「みなさんには協調性を身につけてもらう『ために』、プログラムの中でボードゲームをやってもらいます」のように言われていたら、そこまで好きにならなかったのではないですか?

與那覇 おっしゃるとおりです。あらかじめ「目的」を設定してしまうって危険なことで、「このゲームを10回やれば、うつが治るからやりなさい」と言われたら、11回目をプレイするデイケア利用者は誰もいないでしょう(笑)。「治らなかったから、もういいや」となりますから。

小野 そうなんです。遊びが持っている最大の力は、「目的は?」という問いをいったん無効にしてくれることなんですね。とはいえ「遊びの再評価が必要だ」のように主張すると「何の『目的』で再評価するんですか?」と、やっぱり聞かれちゃいがちなんですけど。

「目的がない」体験が心のスイッチを入れる

與那覇 ぼくはうつ状態の体験から、メンタルが良好だというのは「目的志向の語り方が、心に響く状態にある」という意味だと思っています。健康な時には自分の行動の理由を、目的を示す形で語れますよね。働くのはお金を稼ぐ「ため」で、稼ぐのは美味しいものを食べる「ため」だ、のように。

しかしうつになると、そうした目的の提示はまったく無益になります。お金があったところで、気持ちがどん底なら意味ないじゃん。美味しいものが食べられたところで、うつで味覚が消えてるから関係ないじゃん、としか感じられませんから。むしろその時にもう一度心のスイッチを入れてくれるのは、まさに「目的がない」体験の方なんです。

うつで生きるエネルギーが低下した状態で、みんながデイケアの机を囲んで座っている。そのとき「治療に有効だぞ!」ではなく、ただ黙っているのもなんだから、別に目的はないけれど何か一緒にやろうよと。それでお昼休みに軽めのボードゲームを出すと、盛り上がってお互いの距離が縮まり、「この人とは、明日も楽しく過ごしたいな」といった主体性が戻ってきます。

本来の「遊び」を体感できるのがボードゲーム

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