「陰謀論」にハマる人が後を絶たない根本原因 フェイクニュースとの違いは何なのか
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 7時50分
Qアノンも、2018年ごろまでは一部の強固なトランプ支持者の内輪話だったが、大統領選挙を通じ、わずか数年で全米の多くのトランプ支持者に浸透していった。
陰謀論は検証するのが難しい
Q 陰謀論はフェイクニュースとは違うのですか。
人や社会を混乱させる点では、陰謀論とフェイクニュースは共通している。「コロナワクチンは不妊症を起こす」という情報が少なからぬ人々を不安に陥れたように。
両者の違いは「検証可能性」だと考えている。ワクチン不妊説は専門家やメディアの検証によってフェイクニュースと示された。
しかし陰謀論は、検証するのが難しい。存在するかどうかもわからない影の政府にインタビューをして記事にするのは不可能だ。
Q 日本でも陰謀論者は増えていますか。
日本では陰謀論に端を発する暴力事件は今のところ起きていない。
しかし、「在日コリアンが日本を裏で支配している」といった陰謀論は、「ネット右翼」の間で今でも繰り返されている。「安倍晋三元首相を撃ったのは山上徹也ではない。真犯人はほかにいる」という陰謀論を主張する者も少なくない。
左派・リベラルや反米志向でも陰謀論に陥る人はいる。例えば日米地位協定の運用について日米実務家トップが協議をする日米合同委員会についての議論だ。
日米合同委員会の参加者はごく少数の「政府高官」のみであり、協議の中身は原則非公開。あるジャーナリストは同委員会について「外務省の密室で」「人知れず協議を重ね」「アメリカ軍の特権を維持するために数知れぬ秘密の合意=密約を生み出している」と指摘している。こうした「秘密裏の政治的合意」といった触れ込みは陰謀論を生み出す格好の材料になりうるので、取扱注意のワードだ。
結論を言えば、日米合同委員会には日米間の新たな合意を決定する権限はないことが通説である。にもかかわらず「密室」「特権」「秘密の合意」といったワードによって、一般人には決して触れることができない秘密の集団のたくらみにより政治的、社会的決定がなされているような印象を与えている。
乖離を埋めるためのストーリー
Q 陰謀論はどういうとき、どういう経緯で生まれますか。
大統領選挙に敗北したトランプが「不正選挙」と主張したり、自民党に選挙で勝てない左派・リベラル勢力が、自民党はさまざまな団体や組織の傀儡(かいらい)になっていると語ったりする事例からもわかるように、陰謀論は目の前で起きている現実を是認できないときに生まれやすい。「あるべき現実」との乖離が大きいとき、その乖離を埋めるためのストーリーとして陰謀論が生まれ、支持を得ていく。
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