「"41歳"現役アイドル」"集客力"なくても活躍の訳【再配信】 年200本出演!「逆境」をプラスに変える生き方
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 8時0分
アイドルの多くは10代〜20代でその人生をまっとうする。青春時代にステージで活躍し、卒業後は女優などのセカンドキャリアへ進むのが一般的だ。
しかし、40代になってもなおステージへの執念を見せるアイドルもいる。41歳の現役アイドル、まりえ(41)さんである。
20代後半でアイドルの世界へ。キャリア15年目をひた走る今も、公称で「年間200本以上」のステージや、各地での撮影会へと精力的におもむく。
年齢にとらわれず、華やかなアイドル界で活躍しつづける覚悟とは。来歴と仕事への矜持に迫った。
【東洋経済オンラインで2023年5月20日に公開した記事の再配信です】
「メイド喫茶の客の一言」でアイドルの世界へ
活動拠点の名古屋と出身地の大阪、さらに東京、北陸を中心にライブ出演をこなすまりえ(41)さんがステージで歌い始めたのは、26歳だった。
ちなみに、名前に続く数字が示すのは、自身の年齢。
大阪に住んでいた当時「写真店や工場、パチンコ店、ケータイキャリアのキャンペーンガール」などを渡り歩いていたが、ふと友人にすすめられた「メイド喫茶」のアルバイトが転機に。
「ご主人さま」と呼ばれる客のひとりから「アイドルは誰でもなれるし、ステージにも立てる」と教わった。
初ステージは2008年3月14日で、今も「日付けははっきり覚えている」という。ただ当初、アイドルに興味はなかった。
もともと関心が強かったのは、「アニメやゲームといった2次元の世界」で、リアルな「3次元」の世界は未知。
それでも、まりえ(41)さんの中には「歌いたい」と願う強い気持ち、そして、自身では「うぬぼれ」だったとはにかむ「ほかの人より歌がうまい」という根拠のない自信があった。
かくして立ったステージで歌える環境を、当初は「趣味」として楽しんでいた。
しかし次第に、客席の「ファンの楽しんでいる姿を見る」のが「ストレス発散」へと変化。気がつけば「やりがい」となり、アイドルが「天職」となっていった。
過去をたどると、大阪から名古屋へ渡り、「本気になった」とまりえ(41)さんは言う。
ただ、当初から順風満帆だったわけではない。そこには、紆余曲折があった。
メジャーデビューで「年齢」を前面に
大阪を離れたきっかけは、名古屋のテレビ局で放送されたアイドル番組のオーディション。ユニット結成のため、番組側が目をつけたのが「大阪のソロアイドル」だった。
まりえ(41)さんだけではなく、彼女の活動を支えている現所属事務所であるトイプラの代表・へなぎ氏、ゆぼ氏の3人はチャンスと確信。自分より若い候補者に囲まれたオーディションで、30代の「ネタ枠」として合格した。
しかし、ユニット結成後「お前はユニットではなく、ソロ向きだ」と言われ、やむなく脱退することに。名古屋の地で、再びのソロアイドル活動に戻った。
そのころ、へなぎ氏の意向で、事務所設立を決意。
メンバー募集の呼び水として「メジャーアーティストが必要」と考え、へなぎ氏みずからが貯金を切り崩し、まりえ(41)さんをメジャーデビューさせた。
メジャーデビューシングル『EMPTY∞world』リリースとともに、まりえに続いて「(年齢)」を表記する形へと「改名」。
ステージに立ち続けるアイドル界で、比較的高齢な立場を「ウリ」として、アピールしようと決めた。
ただ、CDデビューを果たしたとはいえ、成功するとは限らないのがアイドル界のリアルでもある。
それこそ、メジャーデビューシングルのリリースイベントで、客席にいたのは4人だけ。そのうちの1人は「通りすがりのおばあさん」だったという。
ソロアイドルは、毎回のリリースが「修行」であり、発売記念のイベントでは、つねに「誰か来てくれるだろうか」と不安もある。その思いは、キャリア15年目の現在も変わらない。
それでもなお、まりえ(41)さんは活動を続けている。
2023年3月18日。渋谷のライブハウスで、デビュー14周年を記念した、東京で初のワンマン公演を実現した。
現地では「初めて見に来ました」という声もちらほら。根拠なき自信で「今、このタイミングだ」と確信したのが、東京公演の理由だった。
紆余曲折はありながら、アイドルとしてのキャリアは15年目。自身の活動に、手応えは感じているのか。
関係者から「出演してくれるだけでありがたい」
ステージに立てば盛り上がるが、「集客力」はない。しかし、そう言い切るまりえ(41)さんの表情は明るい。
自称するのは「アイドル界のマツコ・デラックスさん」のポジション。
集客力のなさを逆境とは思わず、ほかのアイドルと共演するイベントでも「たとえば、10組が出演していたら、私は1位でなくてもいい」と達観する。
そう考える背景には、ファンへの思いやりもある。
ライブ会場へ足を運ぶファンのなかには、ひいきの「推しメン」が「オレのことを見てくれなかった」と、心を病んでしまう人もいる。
それならば、せめて自身のステージで楽しかった記憶を残してほしい。
実際、「一番楽しかった」と言われるときが多く、ファンに対しては「ええんやで、うちのライブを好きに見てくれて。迷惑かけず、ケガをしなければ」と温かい言葉も返すという。
「年間200本以上」のステージへ立ち続けられるのは、そうした姿勢をほかの事務所からも評価されているから。関係者からは「出演してくれるだけでありがたい」と、感謝されることもある。
ただ、ステージへ立つための努力をしているかといえば、意外にも「ジムへ通うとか、体づくりは特にしていない」と笑う。
トレードマークの青い髪を保つため定期的に美容室へ通い、簡単なストレッチを行う程度。気負わず、自然体で天職へ打ち込んでいるのも、まりえ(41)さんの魅力なのだろう。
2023年6月27日で、42歳を迎えるまりえ(41)さん。いつか「体に限界が来たら終わるとしか思っていない」と、将来を見据える。
「アイドル以外の仕事はできない」と断言する覚悟
20代、30代を経た現在は、共演するアイドルを「お母さん」のような気持ちで見守っている。
自分が「一番」ではなく「この子たちのおかげでステージに立っている」と感謝しながら活動。
自分より若いアイドルに自身の「知名度」を利用してほしい思いから、フォロワー数3万人を超えるツイッターでは、ほかのアイドルについても積極的にリツイートしているという。
「何歳まで、現役アイドルであり続けるか」は決めていない。
「50歳まではできないかなと思っていて」と吐露しつつ、結婚したとしても「言わないし、ファンの人たちは結婚してほしいと思っていないはず」と主張。
ツイッターでは、時に「年齢を公表しないほうがいい」とややおせっかいなリプライも飛んでくるが、「自分のウリだし、無視します」ときっぱりと言い切る。
年齢を重ねるにつれて「体や髪の毛のコンディション」が崩れつつあり、「情けなさ」も募る。それでも今、アイドルの仕事に「生活を支えてもらっている」という一心で、ステージへ立ち続けている。
その思いは「甘えでもある」とまりえ(41)さんは謙遜したが、けっしてそうとは言い切れない。
天職をつかんだ先で「アイドル以外の仕事はできない」と断言できる姿勢には、まさに「プロ」と呼ぶほかないと思わされた。
カネコ シュウヘイ:編集者・ライター
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