「マーガリンは危険」と思い込む人が知らない真実【再配信】 日本での「トランス脂肪酸」摂取量は実は少ない
東洋経済オンライン / 2024年11月17日 8時0分
マーガリンといっても、数々の脂肪成分から作られており、トランス脂肪酸の割合は7%程度と報告されています。日本人のトランス脂肪酸摂取量は世界の中でも低く、総エネルギーの0.3%程度です(1%未満とすることがWHOに推奨されています)。
そもそも、アメリカで厳密な制限に至ったエビデンスは、非常に多量のトランス脂肪酸を摂取していたアメリカ人のデータに基づいています。そもそもアメリカ人の多くはハンバーガーとポテトばかり食べており、その原材料(例えば油)の摂取量は桁違いです。 日本でもパンやポテトを食べる人は多いですが、その摂取量は比になりません。
だからまったく問題ない、といいたいわけではありませんが、そこを気にするくらいなら、他に気にしたほうが良いことはいくらでもあります。食事は結局バランスが大事です。
エセ医療のマーケティングに使われている
「食事でがんを治す」というのは典型的な詐欺医療の広告ですが、この中身をみると全てが出鱈目なわけではありません。まったく出鱈目なら誰も騙されないわけで、絶妙に科学的な内容が織り込まれているから、騙される人が後を絶たないのです。
「トランス脂肪酸を是が非でも避ける」というのは、詐欺医療広告の代表格です。「トランス脂肪酸が健康に悪い」という”科学的な”根拠をもとに、トランス脂肪酸を含むマーガリンなどを是が非でも避けさせるよう指導します。このように、わかりやすい「悪役」を叩きのめす、というのは、非常に効果的なマーケティングになります。
ただこの記事で解説した通り、「少しでもトランス脂肪酸を摂ると健康に悪影響を及ぼす」というのは、まったく科学的ではありません。摂りすぎると健康に悪いでしょうが、今現在の環境で、そこまで多量に摂取するのはかなり難しいです。
少なくとも日本ではそんなに気にすることはありません。マーガリンが大好物で毎日大量に食べて心筋梗塞になった、など当然例外的な人はいるかもしれませんが、何にだって例外はあります。例外を代表例として受け取ってはいけません。
また、がんでも他の病気でも、そもそも「治療」こそ医師の専門分野です。いろんな医師が玉石混淆な情報を流して、誰の言うことが正しいかわからない世の中になってしまっている、というのは、主に「予防」の話です。
「治療」は、その道のプロである専門医に聞いた話が、一番正確性の高い情報です。食事でがんを治すというのは、がん治療に関わっている医師が言う話ではまったくないのです。
浜谷 陸太:医師、疫学修士
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