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7000万円級「アストンの頂点」はどんなものか? V型12気筒搭載「ヴァンキッシュ」の出来栄え

東洋経済オンライン / 2024年11月19日 12時0分

ドライブモードセレクターで「スポーツ」を選ぶと、アクセルペダルの踏み込みに対する反応が鋭くなり、大きな曲率のカーブが連続するような道では、「ラインナップの頂点に位置するモデル」とするアストンマーティンの自負を裏付けるドライブ感覚が味わえる。

サスペンションシステムの設定は、どのモードでもやや硬め。コンソール上のスイッチで、ダンパーの硬さを2段階から選べるので、私は一般道ではソフトなほうを選択して走った。ただし、スポーティなモードも車体の動きがしゃきっとして、操縦を楽しむのによい。

乗り心地については、“どこでも快適”という感じでなかったのは事実。一般道ではまったく気にならなかったが、高速道路では、路面が荒れているとショックがハンドルに伝わってくるほどに硬い。この部分は今後、改良されるかもしれない。

ダンパーをスポーティモードにすると、小さなカーブが連続するサルデーニャ島の山道が積極的に楽しめる。車体のロール(傾き)を抑えられるので、操舵に対する車体の反応が速い。

おかげで、リアフェンダーがどんっと張り出した2m近い車幅を、まったくといっていいほど意識せず走ることができた。

顧客が12気筒を求める限り

今回の12気筒エンジンは、新設計とはいえ電動化技術と無縁であることが特徴だ。加速時のトルク増強のためにモーターを使う、マイルドハイブリッドシステムも採用していない。

エンジニアに聞くと、「フロントが重くなるなど、弊害も考えて電動化は避けた」という。そんな中で光るのはターボチャージャーの使い方で、それが「パワーブースト」機構である。

ターボチャージャーにあらかじめ排気を送り込んで与圧しておき、ドライバーが加速のためにアクセルペダルを踏み込んだとき、タイムラグ(遅れ)がなく過給が得られる仕組みだ。爆発的なパワー感である。

ライバルともいえるフェラーリも、2024年5月に自然吸気の12気筒エンジンを搭載した「12チリンドリ」なるスポーツGTを発表している。そのときフェラーリは「状況を見ながら、可能な限り長く12気筒を顧客に提供していきたい」としていた。

アストンマーティンも、やはり「顧客は12気筒を求めている」という。気筒数が多ければいいものではないが、“趣味のクルマ”には、さまざまな楽しさがなくてはならない。12気筒エンジンが、アストンマーティンの魅力のひとつであることに間違いはないのだ。

なお、価格は33万英ポンドというから、日本では7000万円クラスになると思われる。アストンマーティンの頂点に立つモデルだけあって、値段もそれにふさわしいものを、ということか。限られた人の楽しみであるのが、クルマ好きとしては惜しいと思うのも事実だ。

【写真】アストンマーティン「ヴァンキッシュ」のディテールを見る(30枚以上)

小川 フミオ:モータージャーナリスト

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