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ハワイの「ABCストア」米国本土にも店を出す狙い 創業した日系家族に受け継がれてきた経営哲学

東洋経済オンライン / 2024年11月19日 13時30分

「面白いのは、アメリカ本土の店舗で得た収益がハワイに戻ってくるということだ。多くの場合、本土の企業がハワイにやってくる。プライベートエクイティとかが所有するホテルで、すべての利益は本土に流れ出ていく。私たちはそれをひっくり返してここ(ハワイ)に持ってこようと考えた。ハワイを助けるんだ」

一方で、チェーン店を買収するような「積極的な拡大思考は持っていない」。現在、注力しているのは、大規模火災の被害にあったマウイ島・ラハイナの再建への貢献だ。ABCストアも3店舗が全焼したという。

「地元企業が苦境に立たされているのは気の毒だ。行政と土地所有者、そして地域社会が協力して再建に取り組むための話し合いが行われている。(これまで)本土型の企業やデベロッパーに多くを奪われてしまった。先行きはまだわからないが、私は地元企業のビジネスが繁栄することに期待している」

一方で、長年、ABCストアの利用客の中心を占めてきた日本人旅行者は、円安の影響をもろに受け、いまだコロナ前の「3割程度の回復にとどまる」のが現状だという。

「先の見えない未来がいつも心配だ。新型コロナのパンデミックのときは、一時的に75%の店舗を閉鎖せざるをえなかった。政府の支援と、事業を継続するのに十分な蓄えがあったおかげで、誰も解雇せずに済んだ。非常時に備えてお金を貯めておくことは両親の教えだ。(不測の事態に対応するための)十分な資金を確保しておかなければならない」

「基本は、従業員を大切にすることだ。1つは信頼、2つ目は忠誠心だ。私はすべての従業員を維持するために懸命に働いている。まずは彼らの賃金を上げなければならない。当然経費は増えて結果的に収益性は下がるかもしれないけれど、従業員が私たちのビジネスを支えているんだ」

日本のコンビニをどう見ているか

セブン-イレブンやローソンなどハワイに進出する日本のコンビニブランドもあるが、脅威とは捉えていないという。

「日本のコンビニは非常に効率的で標準化されている。どこへ行っても同じなのはいいことだ。でも、型にはまるのはつまらない。観光客はABCストアの店ごとの微妙な違いを探検している。地域によって買えるものが違う。小売業はエンターテインメントでありたいと思っている」

ABCストアは食体験を提供する新業態の「デュークスレーン・マーケット&イータリー」やレストラン「バサルト」のほかに、ベーカリーや新鮮な食材を購入することができるグローサリーとレストランの複合施設「グローサラント」などを運営し、新たなチャレンジを続けている。

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