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"会社員作家"石田夏穂が描く中間管理職の悲喜劇 体重管理に必死なマッチョ係長が仕事でてんてこまい

東洋経済オンライン / 2024年11月20日 9時30分

「0.1キロとか0.2キロとか、体重がちょっと増減するだけで“キーッ”となっている、ある意味で乙女心のあるようなマッチョな男性を描いたら面白い、と思って」

後藤は仕事にもストイック。後藤の目には、同僚たちがどこかサボっていたり、自己管理ができていなかったり、不甲斐ない存在に映る。どうしてちゃんとやれないのだと、不満が辛辣な言葉や態度で相手に向かってしまうときもある。一方で、上司からは接待やトラブル対応などを命じられ、てんてこまい。

そんな上からも下からも振り回される中間管理職の難しさと、体重のコントロールだけはなんとしても死守しようとする必死さがユーモラスに絡み合っていく。

「普通に考えたら“いい職場”なんです。でも主人公があまりにも“きっちりさん”だから、すごいストイックさゆえにあれもこれも気になって……。その真面目すぎが迷惑がられて、職場で浮いているような人を書きたかった(笑)」

上司って本当に“無理ゲー”だなと

その思いの背景には、意外にも「憧れ」があるという。

「私は全然真面目じゃなくて、仕事中、普通にお菓子とか食べちゃうタイプなんです。だから自己管理を徹底できる人に憧れがあって、そういう人の目から見た職場はどのように映るのかな、と思い、小説の中で想像しました」

もう一つの憧れは「強いリーダーシップ」という一面にも向けられている。

「今の世の中、上司って本当に“無理ゲー”だなと思っているんです。やらなければいけない使命や業務があっても、部下に“オラー、やれー!”とか言えないですから。人を動かすときには、多かれ少なかれ強引に進めないといけないときもあると思うんですけど、そういうリーダーシップだとパワハラと言われてしまう。実際、私自身、職場であまり怒られた経験がないんです」

だからこそ、現実には存在しにくい「チームリーダー」が主人公。だらしない部下だと感じたときの、主人公・後藤の言葉は極端なまでにキツイし、見下す態度が強調されている。一方で、上司の命令を断れない、気の弱さも見え隠れする。

「彼のストイックすぎる言動は、実際にあったら問答無用でアウトだと思います。小説の中だから、柔(やわ)い感じの職場にいる、若いけれど“昭和チックな企業戦士”が書けて、自分的には満足しました」

ラストは皮肉の効いた展開だが、それ以上に主人公の狂気と傲慢さ、そして不器用さが一層、強く迫ってくる。

描きたかったのは加害者の立場にある人

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