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16年ぶり自己株買い、みずほが取り戻した「平時」 長年の課題「脆弱資本」との決別に市場も好感

東洋経済オンライン / 2024年11月20日 7時0分

対照的に、みずほFGは2011年にベトナムのベトコンバンクに約450億円出資した程度。低金利下の国内では思うように収益を伸ばせない一方、自己資本比率を押し下げる海外金融機関の買収にも踏み切れず、窮屈な経営を強いられていた。

「選択と集中」が奏功

そこでみずほFGは、東南アジアでの買収攻勢には距離を置く代わりに、国内の大企業取引や北米での投資銀行業務など、得意分野に経営資源を投下する。2015年にはイギリスのロイヤル・バンク・オブ・スコットランドから北米向けの貸出債権やコミットメントラインを約3500億円で取得。

加えて着手したのが経費削減だ。もともとみずほFGの経費率は3メガ中ワースト。そこで2017年、全従業員の4分の1にあたる1.9万人と100拠点の削減を標榜し、2018年度決算では基幹システムなどの減損で6800億円もの損失を計上した。2021年からのシステム障害で改革は一時停滞したものの、荒療治により2023年度の経費率は他メガと肩を並べる62.9%まで下がった。

こうして自己資本比率が9%台に乗ると、距離を置いていた資本提携や買収にも踏み切るようになる。2022年から楽天証券に累計1670億円を出資し、2023年にはアメリカのM&Aアドバイザリー会社のグリーンヒルを約760億円で買収。今年に入っても、クレディセゾンのインド子会社に210億円を出資した。

みずほFGは自己資本比率が9%台半ば~10%台半ばの範囲にある場合、「機動的な自己株買いの検討」を行うとしている。2024年3月末時点での自己資本比率は9.8%。本来であれば、いつ行われても不思議はなかった。

だが、自己株買いに対する市場の期待はしぼんでいた。要因は9月末に明らかになった、楽天カードとの資本提携だ。1000億~2000億円規模の出資が見込まれる中、自己株買いを行う余力は残らないと考えられたからだ。

「3位」の地位から脱するカギ

ところが蓋を開ければ、みずほFGは楽天カードへの1650億円の出資に加え、1000億円の自己株買いも決めた。「資本の充実が図られてきているし、ROE(株主資本利益率)や純利益も上がっている。ただEPS(1株当たり純利益)が上がってない。そこに手をつけることも重要だ」(木原社長)。

前述の通り、9月末時点の自己資本比率は10.5%と目標範囲の上限に達している。出資と還元の二兎を追う余裕が生まれた事実は、市場のサプライズを誘った。

自己株買いラッシュに沸く同業の仲間入りを果たしたみずほFG。とはいえ、利益や株価水準では依然として他メガの背中を追う立場だ。

14日には3社とも2024年度決算の上方修正を発表したが、純利益の引き上げ幅は三菱UFJFGが2500億円、三井住友FGが1000億円に対して、みずほFGは700億円だった。

3メガの中でバランスシートが最も小さいみずほFGは、金利上昇局面での規模の経済が2社と比べて働きにくい。利ザヤの拡大はもちろん、手数料収入の拡充や資産効率の引き上げを他メガ以上に果たすことが、「3メガ中3位」の地位から脱するカギとなる。

一井 純:東洋経済 記者

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