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斎藤知事「パワハラ問題」謎に包まれたままのこと 斎藤知事「告発→失職→復活」までの経緯(上)

東洋経済オンライン / 2024年11月21日 17時30分

藤田氏は11日の会見で、堀井氏の情報源について「複数だと認識している」とし、百条委員会開催に反対していた県党幹部からの情報漏洩は「考えにくい」と述べている。

誰が元局長のプライバシーを漏らしたのか

となると、誰が堀井氏に元局長のプライバシーに関する情報を流したのか。筆者は斎藤知事の側近の1人が今年4月、元局長のパソコンから告発内容に無関係のコピーをプリントアウトして持ち歩き、周囲に誇示していたとの話を耳にした。

上司である斎藤知事はこれを否定したが、仮に側近が情報を漏らしていたとしたら、地方公務員法第34条1項前段の「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」に抵触し、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に科せられる可能性がある。

一方で、元局長が告発文書で指摘した斎藤知事の「パワハラ」の証拠は積み上がっていった。兵庫県が9700人の職員を対象に行い、うち6725人から回答を得たアンケート調査では、斎藤知事のパワハラを「目撃(経験)等により実際に知っている」と140人が回答し、「目撃(経験)等により実際に知っている人から聞いた」と800人が回答。さらに「人づてに聞いた」と回答した1911人を加えると、回答者の42%がなんらかの形で斎藤知事のパワハラを知っていたことになる。

実際に8月30日の百条委員会でも、匿名ではない証言が相次いだ。20メートル歩かせたことで斎藤知事から叱責を受けた東播磨県民局長は、「強い叱責は想定外で、頭の中が真っ白になった」「社会通念上必要な指導ではなく、理不尽な叱責だと感じている」と陳述した。

県庁には、斎藤知事への苦言の電話が殺到した。中には暴言もあり、対応する職員の神経はすり減らされた。そうした中、大阪に激震が走る。8月25日に行われた箕面市長選で、地域政党・大阪維新の会の公認の現職首長が落選したのだ。しかも現職の上島一彦市長(当時)は1万8309票しか獲れず、3万2448票を獲得した原田亮元府議にほぼダブルスコアの差を付けられた。

斎藤氏が「追い出される」まで

これに驚愕したのが、斎藤知事寄りの姿勢を示していた兵庫維新の会である。兵庫県議会の自民党、公明党、「ひょうご県民連合」と共産党および無所属議員4人は、9月12日に斎藤知事に辞職を求めたが、兵庫維新の会はこれに参加せず、彼らに3日先駆けて、斎藤知事に辞職を求めている。

そしていよいよ9月19日、兵庫県議会で斎藤知事の不信任案が全会一致で可決された。百条委員会は続いており、第三者委員会からの報告は来年3月末に出ることになっていた。

にもかかわらず不信任案の決議を急いだのは、混乱する県庁を鎮めるという名目に加え、斎藤氏を追い出すチャンスと見なし、さらに斎藤批判の世論に安易に迎合したためだろう。

が、振り返れば反斎藤陣営の勢いはここがピークだったか。ここから陣営の足並みは揃わなくなっていくだけでなく、「風」も読めなくなっていく。

一方で斎藤知事は、“次”に向かって着々と準備していたようだ。不信任決議を受けた首長は、10日以内に議会の解散か辞職を選択でき、どちらも選ばなければ失職する。

不信任後の斎藤知事は、いったん登庁して記者のぶら下がりに応じた後、知事室に入ることもなく、県庁から姿を消した。「これからのことを弁護士などと相談しているのではないか」と、ある関係者は語っている。

(後編:斎藤氏への世論「批判から熱狂」に変わった"本質")

安積 明子:ジャーナリスト

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