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斎藤氏への世論「批判から熱狂」に変わった"本質" 斎藤知事「告発→失職→復活」までの経緯(下)

東洋経済オンライン / 2024年11月21日 17時30分

だが公用パソコンのみならず、元局長から私物のUSBまで有無を言わさず押収し、一週間後に迫った退職を慌ただしく取り消して、元局長を降格させたにもかかわらず、そういう動きは皆無だった。

プライバシーを間違った内容で暴露

また立花氏は「元局長は10年間に10人と不倫していた」とも主張した。政見放送では、「この県民局長、百条委員会で調べたところ、不倫していたんですよ、不倫。しかも10年以上もやっていた。しかもなんと、1人や2人じゃないんですよ。複数人の女性と、しかも県庁の女性職員と不倫していました。不倫ですよ。10人ですよ、10年間ですよ」とまくしたてた。だがこの「10人」が根拠のないものであることを、後に立花氏は告白している。

「政見放送で“10年”と言うべきところを“10人”と(口が)ひっかかって、そのまま10人と言っちゃったみたい」

投票日前々日の夜、演説を終えてファンに囲まれ、求められるままにサインしていた時、立花氏は聴衆の1人から「10年で10人と不倫」の根拠について尋ねられ、このように答えている。そして自分で納得したように、「まあええわ。あまり変わらんわ」と呟いた。

まったくひどい人権侵害だが、他にもある。立花氏は11月3日、百条委員会の奥谷謙一委員長の自宅兼事務所に押しかけ、「(元局長には)不同意性交等罪、5年以上の懲役がある犯罪があって、それを隠そうとしているんじゃないですか、奥谷さん」とマイクを使ってがなり立てた。

奥谷氏の母親はあらかじめ別の場所に避難していたが、恐怖に涙したという。さらに立花氏は「竹内(英明)と丸尾(まき)の事務所にも行きます」とも宣言した。

2人は百条委員会で斎藤知事を厳しく追及していたが、これが“犬笛”となったのだろう。凄まじい攻撃が竹内氏と家族に加えられ、生活が脅かされた家族の必死の懇願により、竹内氏は県知事選の翌日に議員辞職した。

こうして「世論」が作られていった。斎藤知事の不信任による出直し選挙は、斎藤知事の資質を問うものだったが、いつの間にか争点が自死した元局長のスキャンダルにすげ替えられたのである。斎藤知事は立花氏とは無関係を貫き、デマを訂正することはなかった。

「兵庫県現象」は一過性のものではない

もっともこれらは有権者が情報を求めた結果ともいえるのだ。しかしこれに応じるべきテレビやラジオなどの既存メディアは選挙の公正中立を尊重し、選挙期間のかなり前から自粛に入るところもある。要するに有権者が情報を十分に得られないのだ。だから、規制のないネットに走る。ネットには真偽不明の情報があるほか、マネタイズを目的として、よりセンセーショナルな内容になっているものもある。

ネット利用者のリテラシーは向上していると言われるが、中にはこうした情報を鵜呑みにしてしまう人もいる。だからこうした“真実”を報じないテレビやラジオ、新聞は悪だという結論になってしまう。

今回の「兵庫県現象」は一過性のものではない。すでに述べたように、今年の東京都知事選などで「作られた民主主義」は実現しており、来年の東京都議選、参院選挙と続くだろう。奇跡の再選を果たした斎藤県政も、これからどうなるか。日本の民主主義はいま、岐路に立っている。

(前編:斎藤知事「パワハラ問題」謎に包まれたままのこと)

安積 明子:ジャーナリスト

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