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9日間で世界一周し破格「100万マイル」Getなるか 話題のスカンジナビア航空キャンペーンに挑戦

東洋経済オンライン / 2024年11月24日 7時50分

スカンジナビア航空が実施している「100万マイルボーナスキャンペーン」が話題です(写真:CHAI / PIXTA)

2024年10月にスカンジナビア航空が発表した100万マイルボーナスキャンペーンが、航空旅行関連の情報を発信するアカウントの間で話題を呼んでいる。

【画像で確認】筆者が計画している9日間でまわる世界一周のプラン

これは期間中に同航空と提携している15社に搭乗すると「100万マイル」のボーナスマイルを提供するというものだ。

そもそも100万マイルとはいったいどのくらいの距離なのか。

地球から月までが片道約24万7000マイル(約39万7500km)なので、100万マイルはおよそ「地球と月の2往復分」に相当する。もし100円で1マイルが貯まるクレジットカードを利用した場合、1億円の買い物をしてようやく得られるマイル数ともいえる。

通常、マイレージプログラムのキャンペーンで、特別に得られるマイル数は数千マイルか数万マイルがほとんどである。

過去には10万マイル程度のキャンペーンもいくつか存在し、2000年にはラテンアメリカの航空会社による「ラテンパス」が10社などに搭乗することを条件とした100万マイルキャンペーンを実施したことがある。

だが、こうした「大盤振る舞い」は近年見られず、消滅してしまったかに見えていた。

このような中で久々に目にしたのが、スカンジナビア航空の100万マイルボーナスキャンペーンだ。いったいどのような内容なのだろうか。まず概要を見てみよう。

100万マイルボーナスキャンペーンの概要

【キャンペーン実施期間】2024年10月8日~12月31日

【キャンペーンの対象者】スカンジナビア航空の公式アプリで参加登録を行ったユーロボーナス(スカンジナビア航空のマイレージプログラム)会員すべてが対象。

ボーナス獲得のためにはユーロボーナスの番号を登録して有償航空券(マイル加算対象運賃)で搭乗するか、ユーロボーナスの特典航空券を利用して搭乗するかのいずれかが必要。

【ボーナスマイルの概要】期間中、ユーロボーナスと提携している航空会社のうち、異なる5社に搭乗するとユーロボーナスの1万ボーナスポイント、10社に搭乗するとユーロボーナスの10万ボーナスポイント。15社に搭乗するとユーロボーナスの100万ボーナスポイントが獲得できる。

【そのほかのルール】このキャンペーン開始前に予約を行っていた場合も加算対象となる。フライトの事後加算は2025年1月までに行う必要がある。【2024年11月26日9時40分追記】初出時の記述「12月20日までに」を「2025年1月までに」に修正しました。

1つの航空券でたとえば2区間飛び、1つがスカンジナビア航空、もう1つがデルタ航空だった場合も、2つの航空会社に搭乗したとカウントされる。結果は2025年1月に通知される。

【加算対象航空会社】SkyTeam(スカンジナビア航空が参加しているアライアンス:航空連合)のなかでも「ユーロボーナスの加算対象となるエアライン」だけが対象となる。

下記にその一覧を示した。カッコ内の左は「有償航空券でのマイル加算の可否」、右は「ユーロボーナスの特典航空券でのマイル加算の可否」を示している。

●アジア:6社

・コリアンエアー(加算可・特典利用可)

・チャイナエアライン(加算可・特典利用可)

・中国東方航空(加算可・特典利用不可)

・厦門航空(加算可・特典利用可)

・ベトナム航空(加算可・特典利用可)

・ガルーダ・インドネシア航空(加算可・特典利用可)

●ヨーロッパ:6社

・スカンジナビア航空(加算可・特典利用可)

・エールフランス(加算可・特典利用可)

・KLMオランダ航空(加算可・特典利用可)

・ヴァージンアトランティック航空(加算可・特典利用可)

・エアヨーロッパ(加算可・特典利用不可)

・タロム(加算可・特典利用可)

●アメリカ大陸:3社

・デルタ航空(加算可・特典利用可)

・アエロメヒコ(加算可・特典利用可)

・アルゼンチン航空(加算可・特典利用不可)

●アフリカ・中東:2社

・ケニア航空(加算可・特典利用可)

・サウディア(加算可・特典利用可)

世界一周なら9日間50万円で可能

このキャンペーンで目指すべきは、やはり100万マイルだろう。

SkyTeamの加盟航空会社はアジア・ヨーロッパ・アメリカ大陸などに分散しているので、現実的には世界一周が最も効率よく安く条件を満たすことができる。

筆者も友人とともに以下の行程で実行する予定だ。

成田(日本)
↓ZIPAIR(キャンペーン対象外)
ロサンゼルス(アメリカ)
↓アエロメヒコ
メキシコシティ(メキシコ)
↓アエロメヒコ
カンクン(メキシコ)
↓デルタ航空
アトランタ(アメリカ)
↓デルタ航空
ボストン(アメリカ)
↓ヴァージンアトランティック航空
ロンドン(イギリス)
↓エールフランス航空
パリ(フランス)
↓タロム航空
ブカレスト(ルーマニア)
↓KLMオランダ航空
アムステルダム(オランダ)
↓KLMオランダ航空
コペンハーゲン(デンマーク)
↓スカンジナビア航空
ジュネーブ(スイス)
↓サウディア 
ジェッダ(サウジアラビア)
↓サウディア
シンガポール(シンガポール)
↓ガルーダ・インドネシア航空
ジャカルタ(インドネシア)
↓厦門航空
厦門(中国)
↓厦門航空
台北(台湾)
↓チャイナエアライン
ホーチミンシティ(ベトナム)
↓ベトナム航空
バンコク(タイ)
↓ケニア航空
広州(中国)
↓中国東方航空
南京(中国)
↓中国東方航空
ソウル(韓国)
↓コリアンエアー
成田(日本)

上記の行程でトータル9日間となった。航空券代は当初燃油サーチャージも込みで49万2000円だったが、後に経路変更を行ったために200ドル追加となってしまった。もちろん全区間エコノミークラスである。

100万マイルの価値は?

航空券代だけで50万円以上を投じることになったわけだが、その見返りはどのようなものなのだろうか。

ユーロボーナスの特典で、羽田からパリまでエールフランスのファーストクラスで往復すると、1往復につき22万5000マイルが必要となる。仮に100万マイルゲットすれば、羽田からパリまでファーストクラスで4往復可能だ。

なお、エールフランスのファーストクラスのパリ往復は、有償航空券なら1往復約222万円なので、4往復で888万円相当となる。

だが、実態はそれほど甘美なものではなさそうだ。62歳の会社員で、自称「弾丸トラベラー」のA氏はこう語る。

「予約システムが使いづらく、調べるのも時間がかかる。試しにパリ往復の特典枠を1年分検索したが、直行便のファーストクラスは往復とも空席なし、ビジネスクラスの空席もまれ。

スカンジナビア航空以外の提携会社便の発券は50ユーロの手数料がかかるのも痛い。南アジア内の往復はビジネスクラスで5万ポイントと割がいいが、こちらも空席は限られる。行きたい時期と場所を優先せずに、まず取れるところを押さえるのが基本だろう」

仮に100万マイルを獲得できたとしても、その後にまた試練が待ち構えているというわけだ。なお、ユーロボーナスのマイルの有効期限は4年間なので、1年間に25万マイルほどのペースで消化しなければならない。

キャンペーン達成に立ちはだかる3つの壁

このキャンペーンはマイル数だけをみれば非常に魅力的だが、落とし穴が3つある。

1つはマイレージの加算が確実にできるか、である。

通常マイレージプログラムは予約時にマイルの番号を入力することで自動的に加算されることになっている。

しかしスカンジナビア航空は2024年9月1日にSkyTeamに加盟したばかりで、航空会社によっては予約時にユーロボーナスの番号を登録できない。そのため、航空会社に電話やメールをして、マイレージの番号を登録しなければならないケースもあった。

チェックイン時に登録することも可能だが、実際にはスタッフのスキル不足などが理由で事後登録しろといわれる可能性もあり、可能なかぎりあらかじめ番号を入力しておきたい。

サウディア・ケニア航空・中国東方航空の3社の公式サイトは、いずれもスカンジナビア航空のマイレージ番号を入力するところがなかったのでオンライン旅行会社のエクスペディアで発券を行った。

もちろんそれでも加算漏れのリスクはある。2025年1月までにアプリ(フライトの8日後から申請が可能)もしくはメールで事後加算の申請をする必要がある。【2024年11月26日9時40分追記】初出時の記述「12月20日までに」を「2025年1月までに」に修正しました。

2つ目は自分が購入する航空券の予約クラスが加算対象かどうかの確認だ。単に搭乗しても、ユーロボーナスの加算対象外の予約クラスでは意味をなさない。

だが、航空会社によっては公式サイトでの購入時に予約クラスが不明なことがある。これも航空会社に電話したり、先述したエクスペディア(ここではすべての航空券の予約クラスが購入時にわかる)を利用したりすることでクリアした。

3つ目、これが最大の課題なのだが、全フライトにうまく乗り継げるかどうかである。

日程にゆとりをもたせられる、時間に余裕がある人ならさほど問題にならないが、筆者のように9日間に22フライトも乗り継ぐ場合、これが最大のリスクといえる。

実際、このキャンペーンについての有益な情報が集まるウェブ掲示板フライヤートーク「EuroBonus Millionaire」でも、この点を懸念する声は非常に多かった。何しろ15フライトが1フライトでも欠けたら獲得マイルがいきなり100万マイルから10万マイルとなってしまうからだ。

周知のとおり、飛行機には遅延がつきものである。仮に1フライト98%の可能性で次の便に乗り継げたと仮定すると22フライトの場合、乗りつぎ回数は21回。0.98の累乗で約65%となる。

だが発想を変えて仮に65%の可能性で100万マイルが獲得できるのであれば期待値は65万マイル。1マイルの価値をかりに1.5円と設定すれば約100万円となる。これなら50万円の投資をしても理論上はリターンのほうが高いことになる。

もちろん1分単位で過去のフライト時刻がわかるFlighawareやFlightradar24などのサイトで、自分が乗る予定のフライトで大幅な遅延がないかどうか調べておくことは必須である。

近年まれに見る規格外のキャンペーン

それにしても不思議なのは、なぜスカンジナビア航空がこうしたキャンペーンを実施したのかということだ。

もちろん同社がスターアライアンスからSkyTeamに移行し、新たなネットワークを顧客にアピールする機会だという説明はつく。かつては航空会社がその場の勢いで決めたのではないかと思ったほど、こうした大型キャンペーンは少なくなかった。

だが、その後航空会社も学習し、こうした「アバウト」なキャンペーンはすっかり影をひそめていただけに、スカンジナビア航空の今回のキャンペーンが異質なものと感じられる。

何はともあれ、こうしたキャンペーンは計画を立てているときが一番おもしろい。複雑なゲームをクリアするような感覚を覚えるからだ。

今後同様の超大型キャンペーンが出る可能性は決して高くはないだろう。しかし、「ラテンパス」の100万マイルキャンペーンから実に四半世紀近くを経て再び100万マイルキャンペーンが登場した以上、「次」がまったくないとも言い切れない。

今後もこうした規格外のキャンペーンが現れることを期待したい。

橋賀 秀紀:トラベルジャーナリスト

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