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あの「セロテープ」が価格競争から脱却できたワケ 「座って商談をする時間ももらえなかった」

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 10時30分

ニチバンでは、この環境にやさしい天然素材であることを何よりの「付加価値」として、パッケージや巻き芯に「天然素材」と大きく表示。広告や営業でも天然素材が主原料であること、また商品メリットなどもアピールしてきました。

例えば、天然素材が主原料の『セロテープ』は、石油系素材を使ったものと比べて、廃棄して燃やした際に二酸化炭素の排出を抑えられます。つまり、日本が2050年に達成をめざす「カーボン・ニュートラル」を具現する商品なのです。

また、植物繊維であるセロハンの特性として、力をかけずにサッと引き出せ、指だけでスッと切れるという使いやすさがあります。静電気が起こりにくいのできれいに貼りつけることができ、薬局など粉末を取り扱う場所でも安心して使えるといった利点もあります。さらに天然ゴムを原材料とした粘着剤は、どんな素材にも比較的貼りつきやすく、においも少ないため、汎用性・利便性の高さも特徴のひとつです。

『セロテープ』はこのように、「植物由来」だからこそのメリットや性能面での利点も満載で、高い付加価値があり、国産セロハンテープの先駆けとしての歴史とブランド力を土台に、市場での地位のゆるぎなさは約束されているかのように見えました。

OPPテープにシェアを奪われた

ところが、話はそう単純ではありません。近年、透明テープとして、素材が植物由来のセロハンではなく、ポリプロピレンフィルムという石油系のプラスチック素材を使用したOPP(Oriented Polypropylene)テープが多く出回るようになりました。

OPPテープの出現以来、情勢は一変しました。『セロテープ』は透明テープ市場、とりわけBtoBの業務用ルートにおいて、OPPテープに次第にシェアを奪われていくことになったのです。

OPPテープは何より、「価格の安さ」が『セロテープ』を脅かす最大の要因でした。

現在のコスト上昇時代以前であっても、経費削減に努めることは健全な企業経営のための基本中の基本。見た目も用途も同じなら、安いほうを選択したくなるのは当然です。

ニチバンでは営業担当者が取引対象となる企業、工場、店舗などを1件1件訪問し、先方の担当者と商談をする営業スタイルをとっていますが、営業先の購買や調達の担当者たちは、コスト優先のもと、経費をできるだけ抑えるのが仕事です。

そのため、営業先の企業に出向いても、「座って商談をする時間ももらえない」。これが当時のニチバンの業務用ルート営業担当の日常でした。

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