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北海道新幹線「函館駅乗り入れ」実現の可能性 大泉市長出席のセミナーで何が語られたのか

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 6時30分

前例のないフルサイズ車両の在来線直通の可否については、大泉市長の後に登壇した北海道大学大学院の岸邦宏教授が、今回のコンサルの調査以前の研究論文中に記している。それによれば、道内の線路は除雪に対応して複線間隔や線路脇の設備とも隔離が広く、乗り入れ区間には大きな河川の鉄橋やトンネルがないので、根本的な設備の作り替えをせずとも在来線上の運転が可能とみる。コンサルによるフル案も、同様に考えてのことだろう。

旅客需要は乗り換え解消と所要時間の短縮により、乗り入れがない場合の輸送密度予測5100人に対して約1300人の増が見込めるとし、来訪者の増、宿泊や飲食等の消費増による経済効果は年114〜141億円と弾き出された。そして6パターンの中から函館市としての絞り込みを行い、東京・札幌の両方から分併ナシで直通、車両はフルサイズという案で検討してゆくこととした――と述べた。

上記算出額には車両費が含まれず、JR北海道は当初「函館直通は妥当性が薄い」と評していたが、大泉市長はこの場でも、JRに車両調達費を求めない方向と表明している。

続く基調講演は岸教授が立った。

札幌―函館間は現行「北斗」で乗り換えナシ3時間50分のところ、新幹線は札幌―新函館北斗間が1時間となる。だがそれに並行在来線列車の所要時間に乗り換えの手間と時間が必要であり、基調講演後のディスカッションでは、市街と新幹線駅が18kmも離れていることはデメリットでしかないと語った。そして札幌と函館で実施した市民の意識調査に基づいてまとめた研究論文(「ミニ新幹線による函館駅への新幹線直通運転の可能性」2023年に東アジア交通学会で発表)の論点を紹介。運賃・料金、運営事業費、建設費、およびそれを30年で償還するとしたら……等を詳細に計算した結果、初期投資は大きいが多くの利用者は直通新幹線を選好し、施設保有会社は事業費を回収でき、運行会社も利益を確保できると結論づけた、と説明した。

延伸時に「函館」をどうする?の議論こそ肝心

現在の諸物価値上がりで計算し直す必要はあり、課題は多々出てくるだろうが、技術面は必ず解決できる。財源が最も悩ましい議論になると予想されるが、調査ではビジネス・観光客とも高い割合で相応の対価を払う意思があるとの結果が得られ、受益者負担が成り立つ。函館―札幌間が新幹線で結ばれれば効果は道全体に及ぶ。最終的には札幌延伸時に、「函館」をどうするかであり、その議論を巻き起こすことが最も重要。法律・制度の作り替えも必要になるが、何もしないのか、どこまでやれるかは地域・社会の気運にかかる――と参加者にハッパをかけた。

今回のフォーラムはあくまで函館市によるもので、後援や共催として「JR北海道」や「北海道」、はたまた「国交省」の文字はない。聴講した道関係者は「“むずかしい”との立場」と語る。果たして、今後どのような潮流になってゆくか、函館市が実現を目指す「札幌延伸の時」は遠い話ではない。

鉄道ジャーナル編集部

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