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中国で相次ぐ「無敵の人」政府が恐れる"爆発の芽" 豊かな頃から一変、経済不安が渦巻く社会に

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 12時0分

「勉強を頑張ったらこういう暮らしができるということも示さないといけない」

中国は2010年、GDPで日本を抜いて世界2位に浮上した。「経済的に豊かになる」ことが共通の目標で、それはほとんどの人にとって実現可能に思えた。格差があっても、1人ひとりが過去の自分に比べて「より豊かになる」道筋が示されていた。

100人超の学生たちに日本のバブル経済について説明し、「中国経済にバブルの危険はあると思うか」をテーマにレポートを書いてもらったことがある。見解はさまざまだったが、少なくない学生が「バブルが生じたとしても政府が解決する」と記した。

氷河期世代以下の日本人には想像がつきにくいだろうが、成長率が8%前後で推移し、不動産価格が上昇を続ける国は、政府の求心力が高く、多くの人は政治という面倒事を他人に任せ、多少の不自由も受け入れることを選択する。日本の高度経済成長時代もこんなに単純な社会だったのだろうか、と思わずにはいられなかった。

アラブの春は民主化を求める運動だったが、一部の国家が賃金アップや給付金によってデモを鎮静化させたことからわかるように、反政府運動は貧困層の困窮や若者の高い失業率という経済不安で加速するものなのだ。

「無敵の人」による事件が相次ぐ

一方で現在の中国の状況を見てみると、中国恒大集団のデフォルト危機が表面化して3年が経った。同社は今も存続しているが、政府が救済を渋ったこともあって、危機は業界全体に広がり、景気をじんわりと冷やしていった。

2024年に入るとあらゆる統計指標が不景気を示すようになった。2010年代前半から広州市に駐在する日本人男性(52)は、「景気は本当に本当に悪い。不動産、小売り、IT。総崩れですよ。こんなの経験したことがない。底が見えない」と話す。

1990年代の日本経済を知る人は口々に、今の中国を「当時の日本に近い状況」と表現するが、中国人の多くにとって日本のバブル崩壊は他人事であり、「何かあっても政府が助けてくれる」と思い込んで不動産に投資を続けてきた。

現役世代の中国人は初めて「頑張っても報われない」社会を経験している。今の20代は、改革開放以来初の氷河期世代になるかもしれない。

今年6月に蘇州、9月に深センで日本人学校の児童が襲撃され、2人の死者が出た。「日本人を狙った犯行か否か」に注目が集まるが、実際は中国では6月以降、10月末までに子どもを狙った襲撃事件が5件発生している。10月末には北京の小学校前で児童3人を含む5人が切りつけられた。現場は中国のトップ大学やIT企業が集積するエリアに位置する、名門校として名高い小学校だった。

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