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ガスト「1990円高級フレンチ」の値段より凄い箇所 身近なお店でフレンチの魅力を楽しむきっかけに

東洋経済オンライン / 2024年11月26日 8時40分

平日14時過ぎ、ランチピークが過ぎた頃に訪店。店前には「至福のフレンチコース」の看板が(筆者撮影)

11月21日、全国で展開するファミレスチェーン「ガスト」で期間限定フェア「至福のフレンチコース」がスタートした。

【画像15枚】ガストの「1990円・高級フレンチコース」はこんな感じ

何でも、東京・白金台のフレンチ「Restaurant L'allium(レストラン ラリューム)」の進藤佳明シェフが監修し、フルコースの価格は1990円だという。「ガスト」にしては攻めた価格設定に興味がそそられた筆者は、提供開始日に早速行ってみた。

■客単価2万円超のフレンチシェフが監修

進藤シェフは「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」や「ジョンティ アッシュ」などフランス料理の名店で長年活躍してきたという料理人。自身の集大成としてオープンしたのが「Restaurant L'allium」だ。

同店のHPを見るとランチのハーフコースでも6500円、ディナーのコースは13000円からと記載がある。ドリンク含めディナーをしっかりと楽しむなら2万〜3万円以上はかかるだろう。

いわゆる「高級フレンチ」の味が「ガスト」で1990円で楽しめるのは、果たして安いのか高いのか気になるところだ。

【画像15枚】ガストの「1990円・高級フレンチコース」はこんな感じ

早速、客席のタブレットから「白金台L'allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース」1990円を注文。

今回のフェアメニューのひと通りが楽しめるフルコースだ。

注文してほどなく、まずは「3種の前菜盛り合わせ」と「カリフラワースープ」の2品が一緒に運ばれてきた。

「カリフラワースープ」は、カリカリのパンチェッタとクルトンが別添えになっていた。確かに、先に前菜に手を付けていたらその間にクルトンのサクサク感が損なわれることは想像できる。細やかな気遣いに特別感があった。

カリフラワーのスープは素材の味が感じられながらも淡泊でさらりとした印象。旨みの強いパンチェッタとサクサクのクルトンが小気味よいアクセントとなっていた。

料理は美味だが、皿はやや残念?

そして「3種の前菜盛り合わせ」。

正直に言うと皿のチョイスに驚いた。この半月型の黒い皿では、フレンチの前菜というよりまるで居酒屋のお通しのようだ。

左の料理は「アンディーブの柚子ビネグレット和え」なのだが、皿のせいで白菜の浅漬けに見えなくもない。トッピングの赤い粒はピンクペッパーなのだが、唐辛子の輪切りに見え、ますます白菜の浅漬け感を強めている。

調べると普段「ガスト」ではこの皿はからあげや焼き鮭などを盛り付けるのに使われているようだった。

せめてシンプルな白い丸皿ではだめだったのだろうか? おそらくオペレーション上の都合など何かしらの事情があってのことだろうが、盛り付けも商品価値の1つになると思うと筆者には疑問が残った。

盛り付けでややテンションが下がってしまったが、実際に「アンディーブの柚子ビネグレット和え」を食べてみると、しっかりとフレンチらしい香りと酸味の利いた味わいで、思わず白ワインが欲しくなる。

「アンディーブ」とはチコリのことで、サクッとした食感でほのかな苦みが特徴の野菜だ。ビネグレット(酢)のほどよい酸味に柚子の香りが鼻に抜け、チコリの苦みと呼応する完成度の高い味わい。「ガスト」でこのような料理が食べられることに驚き、「白菜の浅漬けかと思ってごめんなさい」と心の中でつぶやいた。

それ以外は「帆立のバターソテー」、「サーモンマリネのグジェール」。「グジェール」とは甘くないシュー皮に具材を挟んだアミューズだ。

メインは「ガスト」が得意なハンバーグ

その後、メインとなる「ビーフ100%ハンバーグ ペリグーソース~ごぼうのチップをのせて~」と「ソフトフランスパン」が運ばれてきた。パンではなくライスも選べた。

「フレンチのメインがハンバーグ?」という疑問もなくはないが、このフェアのためにイチから商品を開発するのは食材調達のコストやオペレーション面での負担が大きいはず。

今回は、既存のメニューや食材、設備を活用しながら進藤シェフの知恵を借り、本格フレンチの魅力を表現しようということではないだろうか。

そこで「ガスト」が得意とするハンバーグをメインとしているのかもしれない。「ガスト」の客層としても、食べ慣れない未知の料理よりも親しみやすいハンバーグの方が喜ばれそうだ。

ハンバーグ自体はいわゆる「ガストのハンバーグ」なのだが、ソースや付け合わせに趣向を凝らし、フレンチへと昇華させている。

ソースは赤ワインや黒トリュフの香るペリグーソース。付け合わせのポーチドエッグは赤ワインに漬けてあるそうで、紫色に染まっているのが特徴的だ。ナイフを入れるととろりと卵黄が流れ、ハンバーグに絡めて楽しめる。

ハンバーグを平らげるとほどなくして最後のデザート「ブランマンジェプラリネ」が登場。

「ブラマンジェ」はいわゆるミルクプリンのようなもので、カリカリのプラリネナッツと、「ガスト」と「Restaurant L'allium」のコラボロゴ印刷がされたチョコレートが添えられていた。

以上がコース内容となる。しっかりと食べ応えもあり、メインがガッツリとしたハンバーグであるぶん、スープや前菜は軽い食べ心地となっておりコース全体のバランスも絶妙だ。日常の食事というより「ちょっとしたご褒美」として楽しむのであれば1990円という価格は妥当だと筆者は感じた。

提供は「人」がタイミングを見て行う

近年、「ガスト」では配膳ロボットの導入が進み、店内をネコ型ロボットが走り回る姿はもはやお馴染みの光景だ。

しかし、今回のコースはすべて人間のスタッフから提供された。前菜とスープ、ハンバーグとパン、デザートの計3回に分けてサーブされたが、その都度、スタッフは筆者の食事の進行具合を気にかけていたように思う。分けて提供されることで、食べ手としては料理一品一品に向き合えた。

その間、店内にはネコ型ロボットがせわしなく徘徊していたが筆者のテーブルにやってくることはなかった。こうした点も1990円という価格に見合った価値だと考えられる。

値段以上に凄い? シェフたちの心意気を感じた

今回のフレンチコースは、「ガスト」の安価なイメージもあって、驚きを持って受け入れられている。その狙いについても、すでに言及する記事は少なくない。

ただ、外食メディアで編集者をしてきた筆者には、今回のフェアでは「ガスト」という多くの人にとって身近なお店で、高級フレンチの魅力を知ってほしいというシェフや開発者たちの意気込みを勝手ながら感じた。

ハンバーグという身近な料理をフレンチ仕立てにしていたり、前菜・メイン・デザートと一皿ずつ提供されるコース形式の食事だったり、フレンチやコース料理に馴染みのない人にとっての入門編となるかもしれない。

もちろん、本物の高級フレンチと比較すると全くの別物ではあるが、慣れない人がいきなり高級店に行くのも緊張する。気軽に入れるファミレスで、普段は触れない素材や仕立ての料理を知ることで、フレンチの魅力を知れるのではないだろうか。

さらに、今回のフェアでは小学生以下限定で「お子様幸せフレンチプレート」990円も用意されていた。先述のコースの内容を子ども向けにワンプレートにまとめたものだ。通常、高級フレンチは子連れでは難しい店も多い。そんな中でお子様メニューも用意し、子連れでも気兼ねなく本格的なフレンチを楽しむというシーンを創出しようとしているのかもしれない。

食事中には卓上のタブレットに「至福のフレンチコース」に関してのアンケート回答のお願いが表示された。今後、「ガスト」としても反応を探りながら、このフェアを布石に様々な取り組みを仕掛けていくのだろう。

大関 まなみ:フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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