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「フィリピン大統領の暗殺を依頼」した副大統領 現職マルコス対前職ドゥテルテの全面対決へ

東洋経済オンライン / 2024年11月26日 19時0分

2024年1月には前大統領の次男で南部ミンダナオ島ダバオ市長のセバスチャン氏は、現政権はシニアの遺体を英雄墓地に埋葬するというマルコス家の悲願をかなえた前大統領(父)を牢獄に入れたがっていると憤り、「大統領、あなたは怠惰で国民への思いやりに欠ける。国を愛せないなら辞任すべきだ」と言い放った。

「牢獄に入れる」とは、前政権が進めた「麻薬撲滅戦争」で警察官らが司法手続きを経ずに多数の「容疑者」を殺害した超法規的殺人をめぐる捜査でドゥテルテ氏に刑罰が科されるという意味だ。

ドゥテルテ氏は2024年11月13日、下院の合同委員会の公聴会に出席し、ICCの捜査について「少しも恐れていない。このままでは私が死んでしまう。明日にでもここに来て調べろ。旅費を出すなら出頭する」と述べ、「有罪判決が出たら刑務所で朽ち果てるまでだ」と強気の発言を繰り返した。

殺人を告白する13時間の「ドゥテルテ劇場」

公聴会は午前11時前に始まり13時間に及ぶマラソン審議となった。ドゥテルテ氏は大統領になる前の南部ミンダナオ島ダバオ市長時代に密売人ら6、7人を自らの手で殺したと証言。麻薬戦争で容疑者の殺害を命じたかと問われると、容疑者が抵抗するように仕向けて殺害するよう促したと認めた。

79歳の前大統領は、時に議員の質問を遮ってまくしたて、気に入らないことを言う同席者を「殴るぞ」と脅したり、マイクを振りかざしたりして威嚇した。審議の途中でサラ氏が傍聴席に現れ、父の体調を気遣ったり、軽食を差し入れたりする場面もあり、議場はさながら「ドゥテルテ劇場」の様相を呈した。

ドゥテルテ氏は2016年の大統領選で麻薬撲滅を最大の公約に掲げ、就任から半年以内に違法薬物を国内から一掃すると宣言した。

公約は果たされなかったものの、6年間の任期中に200万人以上の中毒者を更生し、30万人以上の容疑者を逮捕、640億ペソ(約1600億円)相当の違法薬物を押収したと政府は成果を強調していた。

一方、公式発表だけでも捜査の過程で6235人が殺害された。人権団体によると実際には2万~3万人が犠牲となった。その多くは司法手続きを経ない超法規的殺人だったとされる。

犠牲者の遺族らの訴えを受けて、ICCが「人道に対する罪」で捜査を始めると、前政権は2018年にICC脱退を宣言し、1年後の2019年3月に正式に脱退した。しかしICCは、脱退以前の期間は捜査対象になるとして、ドゥテルテ氏のダバオ市長時代にさかのぼって調べを続けている。

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