1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

6割増の急成長「シチズン エル」手掛けた女性社員 地球環境や人に配慮したサステナブルウォッチ

東洋経済オンライン / 2024年11月27日 16時0分

私は2019年9月に、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会の立場でMさんに取材させていただきました。

『シチズン エル』は当初、ヨーロッパ市場向けのブランドとしてスタートしたのですが、ちょうどMさんが育児休業明けで職場復帰したタイミングで、日本を含めた全世界で販売できるようなブランドに立て直すリブランド企画がもち上がっていました。

その担当者に抜擢されたのがMさんでした。

2014年から世界共通の美を再検討し始めました。

それが何なのか、毎日プロジェクトチームで議論していく中で、「人にたとえたら?」という話をしたときに、オードリー・ヘプバーンやダイアナ妃の名前が挙がりました。

その共通点は何かと考えて、積極的に社会貢献をしていたという内面の美に気づいたのです。

オードリー・ヘプバーンはその可憐な美しさで一世を風靡(ふうび)した女優ですが、晩年は、アフリカなどの貧困地域に赴いて積極的に社会福祉活動を行っていたこともよく知られています。

めざすものがMさんの中で明瞭になり、確固たるものになりました。

「内面の美しさ・輝きをたたえる時計をつくりたい」

では、時計の内面の美とは? それを追求する日々が続いていたある日、隣の部署の社員が一風変わったTシャツを着ているのが目にとまります。尋ねたところ、国連のTシャツだと説明されました。隣の部署はCSRの部署ですが、当時MさんはCSRのことをあまり知りませんでした。

これをきっかけにCSRの部署と共同体制をとりながら、SDGsの視点から見ると、時計の製造から販売まで、一連の過程には、実にさまざまな問題があることに気づきました。先ほどの紛争鉱物の問題、二酸化炭素排出量の問題、過剰包装や数カ国語で書かれた分厚い取扱説明書などです。

こうして最終的には、「エシカル(倫理性)」をコンセプトとする方向性が固まり、種々の問題を1つひとつクリアしていきながら、「地球も自分も美しくする、エシカルなジュエリーウォッチブランド:『シチズン エル』」が誕生したのです。

子どもたちの未来を共感に

Mさんのエピソードの中で私が最も注目したのは、サステナビリティやエシカルといったコンセプトが、単にトレンドだからではなく、誕生した子どもの未来を思う心、子どもに内面の美しい人に育ってほしいという願いも込められていたことです。

これこそがまさに、人の心に響くストーリーです。

『シチズン エル』は、2018年度の国内での売上が発売当初(2016年)の6割増と急成長を遂げています。Mさん自身はその背景を、

「購入層の中心はおそらく価格の点から上の年代が多いものの、学校の授業でサステナビリティやエシカルについて学んでいる若い方の意識が高いので、結果的に幅広い年代に支持されている」

と語っていました。

特に、中心的な購買層である比較的年齢が上の年代と、サステナビリティについての知識を学ぶ機会がある若い層の中間に位置する子育て世代。この世代の女性は、子どもにかかる養育費や教育費を考慮すると、自分のために高価な時計を買うことを逡巡するかもしれません。

しかし、この時計には、つくった人の子どもへの思いが込められ、子どもたちが生きる将来への配慮が尽くされた時計であると知れば、同じ子どもをもつ多くの母親が、その思いと配慮に共感を覚え、思わず手にとりたくなるのではないでしょうか。

深井 賢一:リブランディングコンサルタント

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください